ミステリー・推理小説データベースTOP本格黄金時代

二人で探偵を

UK トミー&タペンス・ベレズフォード夫妻
(Tommy and Tuppence Beresford)

秘密機関
「秘密機関」
(1922年)
(早川書房)
 ミステリーの女王アガサ・クリスティーの生み出した、夫婦で探偵を務めるおしどり探偵コンビ。当初は二人はまだ青年と若い女性として登場しますが、ほどなく70歳を過ぎ、双子の子供と三人の孫に囲まれた老夫婦となっています。

 妻プルーデンス(タペンス)は牧師の娘で、グレーの大きな瞳にまっすぐな黒い眉、勢いよくカールしたもじゃもじゃの黒髪が特徴的で、見るからに意志の強そうな顎を持ち、決して美人とは言えないものの、個性と魅力に溢れた表情を湛えています。
 陽気で楽観的な性格で好奇心が非常に強く行動的。また夫とは対照的に直観力にも優れています。

 夫トーマス(トミー)は赤毛の好青年で、常識的な判断力を兼ね備え、慎重に考えて行動するタイプであり、活動的なタペンスのストッパー的役割も果たします。

 元々二人は幼なじみでしたがやがて離れ離れとなり、しばらくして第一次世界大戦が勃発。トミーの方は情報部に所属し軍人として活躍していましたが、復員後は職探しに奔走する毎日。一方タペンスの方は第一次大戦中は雑用係から看護婦として働いていました。
 そして第1作「秘密機関」は、この二人がロンドンのドーヴァー・ストリートの地下鉄の入り口前で偶然出会う所からスタートします。
 間もなく二人は「青年冒険商会」の名で職を求める新聞記事を掲載しようと目論見ますが…そこから二人はスパイとして活躍することとなり、二人の恋愛はスリルとサスペンスに満ちた事件とともに進行していきます。

 続編の短編集「おしどり探偵」では、今度は素人探偵として事件を解決していくのですが、この作品では探偵の素養のない二人が自分たちが読んだ有名なミステリとそこに登場する名探偵たちの手法を参考に「探偵ごっこ」を繰り広げるという興味深い設定で読者を楽しませてくれます。

 ちなみにこの作中で登場する探偵は、有名な所ではホームズからソーンダイク博士、ブラウン神父、隅の老人、思考機械、フォーチュン氏、ブルドッグ・ドラモンド、アノー探偵にフレンチ警部、ロジャー・シェリンガム、そして我らがエルキュール・ポアロとまさに豪華絢爛。どの作品が誰の真似をしているかを、読み比べてみるのも興味深いことだと思います(他に作家としてエドガー・ウォーレスの名も)。

 またシリーズの最終長編「運命の裏木戸」はクリスティーが最後に書いた作品であり(ポアロ最終作「カーテン」とマープル最終作「スリーピング・マーダー」はいずれも第二次世界大戦頃に書かれていた作品)、このことからもクリスティーがこのおしどり夫婦に並々ならぬ愛着を抱いていたことが窺い知れます。
おしどり探偵
「おしどり探偵」
(1929年)
(早川書房)

■原作■

アガサ・クリスティー
(Agatha Christie 英 1890-1976)


■人物ファイル■

本名 夫・トーマス・べレズフォード(愛称はトミー)
妻・プルーデンス・べレズフォード(旧姓カウリイ)(愛称はタペンス)
住所 イギリス・ホロウキイにある〈月桂樹〉荘
若い頃はロンドンで「屋根裏の小さな部屋」を間借りしていた。
職業 ■トミー■
第一次大戦中は情報部で活躍、復員後は失職していたが、結婚と同時に情報部に復職。また国際探偵事務所所長も務める。現在は隠退

■タペンス■
父親が牧師をつとめる家庭の五女として生まれる
第一次大戦中はロンドンの病院に勤務、雑用係から看護婦に。その後は運転手をしたり官庁に勤めたりしたが、長続きせず。次いで「青年冒険家商会」を設立
結婚後は専業主婦。夫の探偵事務所の秘書を務めたことがある
家族 子供は双子の兄妹デリクとデボラ
孫でデボラの子供であるアンドルー、ジャネット、ロザリー
養女のベティ(現在アフリカに)
協力者 元エレベーター・ボーイの事務員アルバート・バット
ペットのテリヤ犬・ジェームズ、のちハンニバル
事件簿 4長編23短編に登場
1短編集

■関連リンク■

1 海外ドラマシリーズ おしどり探偵(二人で探偵を)

2 映画「アガサ・クリスティーの奥様は名探偵」公式サイト


■事件ファイル■

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
秘密機関
(秘密組織)
1922 早川文庫 クリスティー文庫47
早川文庫1-70
創元文庫105-11
HPB569
 
NかMか 1941 早川文庫 クリスティー文庫48
早川文庫1-42
HPB308
 
親指のうずき 1968 早川文庫 クリスティー文庫49
早川文庫1-10
HPB1131
映画化「アガサ・クリスティーの奥様は名探偵」('06)
運命の裏木戸 1973 早川文庫 クリスティー文庫50
早川文庫1-59
HPB1234
クリスティーが最後に書いた作品

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
  おしどり探偵
(二人で探偵を)
1929 早川文庫 クリスティー文庫52
早川文庫1-36
創元文庫105-12
HPB555
 
  1 アパートに妖精出現
(アパートに妖精がいる)
1924    
2 お茶でも一杯
(お茶をどうぞ)
   
3 桃色の真珠事件
(桃色真珠紛失の謎)
  2部仕立て
4 怪しい来訪者事件
(珍客到来)
  2部仕立て
5 キングに気をつけること
/新聞紙の服を着た男
(キングで勝負/新聞紙の服を着た紳士)
  2部仕立て
6 婦人失踪事件
(婚約者失踪の謎)
(消えた貴婦人)
(消えた淑女)
早川文庫2-38「シャーロック・ホームズの災難/上」('84)
講談社・河出文庫「ホームズ贋作展覧会」('89)
別冊宝石83('59)
 
7 眼隠し遊び
(盲蛇におじず)
   
8 霧の中の男   2部仕立て
9 ぱしぱし屋
(ぱりぱり野郎)
  2部仕立て
10 サニングデールの謎事件
(サニングデールの怪事件)
  2部仕立て
11 死のひそむ家
(死をはらむ家)
  2部仕立て
12 鉄壁のアリバイ
(破れないアリバイなんて)
1928    
13 牧師の娘/赤色館
(牧師の娘/赤い館の謎)
1923   2部仕立て
14 大使の靴
(大使の靴の謎)
1924    
15 16号だった男
(ついに十六番の男が)
   

 


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