名探偵はインディアン

USA ジョー・リープホーン&ジム・チー
(Joe Leaphorn & Jim Chee)

死者の舞踏場
「死者の舞踏場」
(1973年)
(早川書房)

 アメリカのミステリー作家トニイ・ヒラーマンの〈ナヴァホ・ミステリー〉シリーズに登場する、二人の警察官探偵。

 二人ともネイティブ・アメリカンとして知られるナヴァホ族出身の警察官です。そしてシリーズが進むについてリープホーンは退職し、チーは活躍が認められて昇進していきます。

 この〈ナヴァホ・ミステリー〉シリーズは、アメリカ西部の4つの州にまたがるナヴァホ族保留地の荒々しい大自然を背景に、時として魅力ある二人の主人公の人間性や心理描写も織り交ぜながら興味深く事件の謎が展開されていく所にその特徴があります。

 まず第1作から3作品に主人公として登場する年長のリープホーンは、ナヴァホ保留地の中心部ウインドウ・ロックの警察本部に勤務する大学卒のインテリ警察官で、冷静かつ論理的な推理力を持ち、その優秀な能力で伝説的刑事として関係者の間では知られている存在です。

 ちなみに最愛の妻エマはすでにこの世を去っていますが、心の中では常に彼女の存在を感じて捜査に励んでいるようです。


  一方第4作目から6作目に主人公として登場するジム・チーは、中心部から遠く離れたシップロック支署に巡査として勤務する若手警察官ですが、ナヴァホ族としての生き方に懐疑的なリープホーンとは対照的に、部族の「歌い手(ハターリ)」として、ナヴァホ族の文化と伝統を積極的に受け容れようとしている野心家の若者です。

 この点二人は上司と部下の関係でもなければ勤務地もまったく異なり、元々は別々の作品に登場してそれぞれ活躍していました。ところが第7長編の「魔力」から両者が揃って作品に登場するようになり、事件において協力し合うようになります。

 そして若くて行動的な美人弁護士に慕われるチー巡査と、中年に近いベテラン刑事のリープホーンの二人が同時に登場することによって、舞台はより一層賑やかになったと同時に作品全体にも奥行きが広がり、シリーズの人気もますます高くなったと言われています。

時を盗む者
「時を盗む者」
(1988年)
(早川書房)

■原作■

トニイ・ヒラーマン
(Tony Hillerman 米 1925- )


■人物ファイル■

職業
二人ともナヴァホ族の保留地で警察官として勤務する
リープホーンは保留地の中心部ウインドウ・ロックの警察本部に勤務(のち退職)
ジム・チーは中心部から遠く離れたシップロック支署に巡査として勤務
事件簿
18長編3短編に登場

■事件ファイル■

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
祟り
(名探偵はインディアン)
1970 角川文庫('71)
集英社 ジュニア版・世界の推理21('73)
リープホーンのみ
死者の舞踏場 1973 早川文庫ミステリアス・プレス89('95)
早川書房('75)
MWA賞最優秀長編賞('74)
リープホーンのみ
Listening Woman 1978 - リープホーンのみ
People of the Darkness 1980 - ジム・チーのみ
黒い風 1982 早川文庫ミステリアス・プレス41('91) ジム・チーのみ
The Ghost Way 1984 - ジム・チーのみ
魔力 1986 早川文庫ミステリアス・プレス22('90) The Western Writers of America Spur Award ('86)
アンソニー賞('88)
時を盗む者 1988 早川文庫ミステリアス・プレス33('90) マカヴィティ賞
話す神 1989 早川文庫ミステリアス・プレス49('92)
10 コヨーテは待つ 1990 早川文庫ミステリアス・プレス68('93)
11 聖なる道化師 1993 早川文庫ミステリアス・プレス81('94)
12 転落者 1996 DHC('98)
13 The First Eagle 1998 -
14 Hunting Badger 1999 -
15 The Wailing Wind 2002 -
16 The Sinister Pig 2003 -
17 Skeleton Man 2004 -
18 The Shape Shifters 2006 -

【邦訳短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
The Witch, Yazzie, and the Nine of Clubs
妖術師とヤズィーとクラブの9
1981 早川書房「ミステリ・ウェイヴ」('83)
HMM'82.2
Chee's Witch
チーの呪術師
1986 扶桑社ミステリー「自由への一撃」('97)
早川書房「ニュー・ミステリ」('95)
First Lead Gasser
ガス処刑記事第一信
(ガス室)
1993 HPB「巨匠の選択」('01)
扶桑社ミステリー「壁」('97)
EQ'93.9