世界初の長編推理小説を発表

FRA エミール・ガボリオ
(Etienne Èmile Gaboriau)

ルルージュ事件
「ルルージュ事件」
(1866年)
(国書刊行会)

 フランスの作家。ジロンド川の河口にほど近い、フランス南西部の町ソージョンに生まれますが、父親の仕事の関係でラ・ロシェル、タラスコンなどの各地を転々とし、1844年にソミュールの公立中等学校(コレージュ)に半寄宿学校として編入され、学校の成績は芳しくなかったものの、ジェイムズ・フェニモア・クーパーやスタンダール、アン・ラドクリフ、ポー、バルザックなどの文学作品を愛好し、図書館で読書に没頭する日々を送ったといいます。

 その後法律家にしたかったという父の意向に反して騎兵隊に入隊し、除隊後はパリで法律や医学を学びますが、その間生活費を稼ぐため運送会社で働いたり、「ロンドンの秘密」「黒衣(レ・ザビ・ノワール)」などの作品で知られる人気大衆作家ポール・フェヴァルの秘書を務めるなどさまざまな職を転々としています。
  そしてその間、仕事の傍ら雑誌や新聞紙上において普通小説や時評・エッセーなどを書いていましたが、世間の注目を集めるところまではいっていませんでした。

 1866年、ガボリオは仏訳されていたミステリの始祖エドガー・アラン・ポーの作品の影響を受けて書き始めます。そしてポーの探偵小説的手法を世界で最初に長編に取り入れることに成功したのが「ルルージュ事件」でした。

ルコック探偵
「ルコック探偵」
(1869年)
(旺文社)

 この作品は最初日刊紙〈ペイ〉に掲載されたものの何の反響も得られていませんでしたが、この作品に目をつけた〈プチ・ジュルナル〉の創刊者でもあるモイーズ・ミヨーにより、彼の創刊した〈ソレイユ〉紙に1866年4月より連載が開始。
  するとたちまち大きな評判を呼び、以後ガボリオはミヨーの手がける〈ソレイユ〉紙や〈プチ・ジュルナル〉紙上で、精力的に執筆活動を展開し、1873年に41歳の若さで急逝するまでの7年間に「ルルージュ事件」にも登場したルコックを主人公に据えた長編シリーズの他、戯曲や短編など合わせて21の作品(うちミステリは8作品)を残しました。

 このようにガボリオはこの世界最初の長編探偵小説である「ルルージュ事件」の作者としてミステリ史上に名前を残していますが、それと同時に世界最初の刑事探偵であるルコック探偵の生みの親としても歴史に名を残しています。

 また、今日の探偵の推理法の基礎である〈分析演繹法〉という推理方法を初めて導入した人でもあります。即ち、集めた証拠や証言をもとにあらゆる可能性を検討し、次々に消去していって最後に残ったものが、たとえどんなに有り得ない・不可能なものに見えても、それが真実であるという今日ではお馴染みの推理方法です。


■作家ファイル■

本名
エティエンヌ=エミール・ガボリオ (Etienne Èmile Gaboriau)
出身地
フランス、ソージョン(シャトラント=アンフェリユール県)
生没
1832年11月9日(一説には35年)〜1873年9月29日(アフリカ旅行の途中で、41歳)
作家としての経歴
1866
当時仏訳されていたポーに影響を受け、素人探偵タバレとルコックの活躍する世界初の長編推理小説「ルルージュ事件」を書き上げる。これが〈プチ・ジュルナル〉の創刊者でもあるモイーズ・ミヨーの目に止まり、彼の創刊した〈ソレイユ〉紙に同年4月より連載が開始され、大反響を集める
1869
代表作として知られる長編小説「ルコック探偵」を発表
シリーズ探偵
ルコック探偵 (Monsieur Lecoq)&素人探偵タバレ
代表作
【ルコック探偵】
「ルルージュ事件」「ルコック探偵」
【ノンシリーズ】
「バチニョルの小男」(短編集)

■著作リスト■

1 ルコック探偵登場作品リスト

2 その他の作品

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
La vie infernale
(地獄の生活)
1870 春陽堂 探偵小説全集('30) 邦訳は原題のままのタイトル
La dégringolade
(転落)
1872 -
La clique dorée
(英 The Clique of Gold)
(金党)
1873 -
首の綱 春陽堂 探偵小説全集18('30)
大川屋「有罪無罪」('42)
集栄館「有罪無罪」('18)
三友舎「有罪無罪」(明治22)
黒岩涙香翻案 大川屋「有罪無罪」(明治22)
L'Argent des autres
(英 Other People's Money)
他人の銭
1874 明進堂「他人の銭」(明治22)
黒岩涙香翻案 三合館「他人の銭」(明治22)
没後出版

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
Le petit vieux des Batignolles
(英 The Little Old Man of Batignolles)
(バチニョルの小男)
1876 - クイーンの定員8
1 バチニョルの小男 光文社文庫「クイーンの定員 I」('92)
EQ'91.1
2 The Matrimonial Ambassador: Monsieur J. D. de Saint-Roch - 原題不明
3 Love or Wealth? - 原題不明
4 失踪 EQ'92.5(87)
5 呪われた家
(呪はれた家)
EQ'98.9(125)
新青年'29新春増刊
6 The Seminary - 原題不明

【普通小説】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
Les cotillons célèbres
(名高きコティヨン)
1860 -
L'Ancien Figaro
(古きフィガロ)
1861 -
Le 12e Hussards
(英 The 13th Hussars)
(第十三軽騎兵)
-
Les Gens de bureau
(事務員)
1862 -
Mariage d'aventure
(英 Marriage at a Venture)
(冒険結婚)
-
Ruses d'amour
(悪の駈引)
-
Les comédiennes adorées
(人気女優)
1863 -
Le Capitaine Contenceau
(英 Captain Contenceau)
(船長コンタンソー)
-
Les Amours d'une empoisonneuse
(毒殺者の恋)
-

【戯曲】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
Les Billets doux
(艶書)
1877 -
L'Avocat de maris
(良人の弁護士)
1882 -

【参考】「ルルージュ事件」(国書刊行会)
「ルコック探偵」(旺文社 旺文社文庫)
「クイーンの定員T」(光文社 光文社文庫)
「海外探偵小説作家と作品」江戸川乱歩著(早川書房)
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