「2たす2はいつも4」

USA 思考機械
(The Thinking Machine)
(オーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼン教授)
(Augustus S. F. X. Van Dusen)

思考機械の事件簿 I
「思考機械の事件簿 I 」
(東京創元社)

 アメリカの作家ジャック・フットレルの生んだ探偵で、ホームズのライヴァルの探偵の中でも重要な一人に挙げられます。

 名前をオーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼンといい、哲学博士や法学博士などの博士号を持つアメリカのボストンの某大学教授で、名前と肩書だけでアルファベットの半分を使うという面白い特徴を持ち、風貌は小柄で痩せていて、頭は非常に大きく、顔は気難しい表情をしています。

 「思考機械」というあだ名は、チェスの全国大会が開かれた際に、たった一日教えを受けただけで当時の世界チャンピオンをわずか14手で破ってしまい、破れたチャンピオンが思わず叫んだ言葉から来ています。

─「あんたは人間じゃない。いや機械といった方が的確だろう─そうまさに思考機械だ!」

 「2たす2は、いつも4」というのが彼の口癖で、「ありそうもないことだと言うのは構わないが、不可能という言葉は使わないで欲しい」とまで言い切っています。

思考機械
「思考機械」
(早川書房)

 シリーズキャラクターとしては、事件をいつも教授のところに持ち込んでくるワトソン役のハッチ記者とボストン市警のマロリー部長刑事がいて、彼らを助手として様々な難事件を解き明かしていきます。

 思考機械譚はヴァラエティーに富んだストーリーと魅力溢れるトリックで現在でも多くのファンを獲得していて、黄金時代の代表的作家で不可能犯罪の巨匠ジョン・ディクスン・カーも熱心な読者だったそうです。

 1つの長編を含め全部で50編ほどあると言われていますが、著者のフットレルが1912年に起きたあの〈タイタニック〉号の悲劇的な事故で亡くなった際にそのうちの6つの作品がともに海に沈んでしまったといいます。

 またいくつかの作品が新聞紙上で連載されたまま単行本としては未収録になっているようです。


■原作■

ジャック・フットレル
(Jacques Futrelle 米 1875-1912)


■人物ファイル■

職業
哲学博士(PH.D)、法学博士(LL.D)、医学博士(M.D.)、歯科博士(M.D.S.)、王立学会会員(F.R.S.)、
アメリカボストンの某大学教授
口癖
「2たす2はいつも4」
協力者
ワトソン役のハッチンソン・ハッチ記者
ボストン市警マロリー部長刑事
事件簿
新聞掲載も単行本未収録の作品も多数あり、正確には不明
全部で50編ほどあると言われている

■事件ファイル■

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 金の皿盗難事件 1906 創元推理文庫176-3「思考機械の事件簿 III」 唯一の長編

【邦訳短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 思考機械 1977 早川文庫45-1 日本で独自に編纂
全11編
2 思考機械の事件簿 I 創元推理文庫176-1 日本で独自に編纂
全11編
3 思考機械の事件簿 II 1979 創元推理文庫176-2 日本で独自に編纂
全11編
4 思考機械の事件簿 III 1998 創元推理文庫176-3 日本で独自に編纂
1長編含む全7編

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Thinking Machine
(The Problem of Cell 13)
(思考機械)
1907 - 第1短編集
クイーンの定員38
1 十三号独房の問題
(13号独房の問題)
(完全脱獄)
1905 早川文庫45-1「思考機械」
創元推理文庫100-1「世界短編傑作集1」('60)
HPB219「黄金の十二」('55)
早川書房「巨匠の選択」('01)
立風書房「新青年傑作選4 翻訳編」('70)
東京創元社 世界推理小説全集50「世界短篇傑作集1」('57)
宝石'55.9
新青年'39夏季増刊
思考機械初登場作品
黄金の十二
2 赤い糸
(紅い糸)
(緋色の糸)
創元推理文庫176-1「思考機械の事件簿 I」
早川文庫45-1「思考機械」
光文社文庫「クイーンの定員 II」('92)
HMM'74.11
ディクスン・カーが代表作に挙げた作品
3 The Man Who Was Lost
(行方不明の男)
-
4 The Great Auto Mystery
深夜のドライブ
ミステリーズ!'03秋(2)
5 焔をあげる幽霊
(燃える幽霊)
創元推理文庫176-1「思考機械の事件簿 I」
早川文庫45-1「思考機械」
HMM'75.2
ディクスン・カーが代表作に挙げた作品
6 The Ralston Bank Burglary
(ラルストン銀行強盗)
-
7 The Mystery of a Studio -
2 Thinking Machine on the Case
(英 The Professor on the Case)
1908 - 第2短編集
1 序・思考機械登場 早川文庫45-1「思考機械」
2 モーターボート 創元推理文庫176-2「思考機械の事件簿 II」
3 消えた女優 創元推理文庫176-3「思考機械の事件簿 III」
創元推理14('96秋)
4 水晶占い師 創元推理文庫176-1「思考機械の事件簿 I」
5 跡絶えた無線 創元推理文庫176-2「思考機械の事件簿 II」
6 ロズウェルのティアラ 創元推理文庫176-3「思考機械の事件簿 III」
7 ラジウム盗難 創元推理文庫176-2「思考機械の事件簿 II」
8 緑の目の怪物 創元推理文庫176-3「思考機械の事件簿 III」
9 An Opera-Box
(オペラ・ボックス)
-
10 消えた首飾り
(なくなったネックレス)
(なくなったネックレース)
創元推理文庫176-1「思考機械の事件簿 I」
早川文庫45-1「思考機械」
HPB250「名探偵登場1」('56)
11 幽霊自動車 創元推理文庫176-2「思考機械の事件簿 II」
早川文庫45-1「思考機械」
12 茶色の上着
(茶色の上衣)
創元推理文庫176-1「思考機械の事件簿 I」
早川文庫45-1「思考機械」
HMM'75.2
13 完全なアリバイ 創元推理文庫176-1「思考機械の事件簿 I」
早川文庫45-1「思考機械」
14 余分の指
(余分な指)
創元推理文庫176-1「思考機械の事件簿 I」
早川文庫45-1「思考機械」
HMM'74.4
3 Diamond Master 1912 - 英版のみ表題のノンシリーズ中編に加えて収録、全2編
1 呪われた鉦 1906 創元推理文庫176-2「思考機械の事件簿 II」
4 The Thinking Machine 1959 - 再収録2編含む
全3編
1 情報漏れ
(秘密漏洩)
創元推理文庫176-1「思考機械の事件簿 I」
5 Best Thinking Machine Detective Stories 1973 - E・F・ブライラー編
再収録9編含む全12編
1 ルーベンス盗難事件
(盗まれたルーベンス)
1907 創元推理文庫176-1「思考機械の事件簿 I」
早川文庫45-1「思考機械」
2 百万長者ベイビー・ブレイク誘拐 創元推理文庫176-2「思考機械の事件簿 II」
3 復讐の暗号
6 Great Cases of the Thinking Machine 1976 - E・F・ブライラー編
再収録6編含む全13編
1 三着のコート 創元推理文庫176-2「思考機械の事件簿 II」
2 百万ドルの在処 1907
3 壊れたブレスレット 創元推理文庫176-3「思考機械の事件簿 III」
4 The Problem of the Cross Mark
思考機械
(十文字の問題)
EQMM'59.6 「《思考機械》調査に乗り出す」の別バージョン
5 絵葉書の謎
(三枚のはがき)
創元推理文庫176-3「思考機械の事件簿 III」
パシフィカ 名探偵読本5「シャーロック・ホームズのライヴァルたち」('79)
6 消える男 創元推理文庫176-3「思考機械の事件簿 III」
7 タクシーの相客 創元推理文庫176-2「思考機械の事件簿 II」
7 The Art of the Impossible
(米 Murker Impossible)
1990 - 他作家とのアンソロジー
1 An Absence of Air - 「謎の凶器」の別バージョン

【未収録中短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 謎の凶器
(謎の兇器)
創元推理文庫176-1「思考機械の事件簿 I」
HMM'69.5
遺稿の一つ
2 《思考機械》調査に乗り出す 創元推理文庫176-1「思考機械の事件簿 I」 遺稿の一つで第三短編集の冒頭を飾る予定だった作品
3 幻の家
 [1]嗤う神像
   (笑う神像)
   (笑う像)
 [2]家ありき
   (消えた家)
   (あった筈の家)
1907 創元推理文庫176-2「思考機械の事件簿 II」
HMM'88.12
宝石'58.5
メイ夫人との合作
(前半[1]を夫人が担当)

【研究書】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 名探偵読本5 シャーロック・ホームズのライヴァルたち 1978 パシフィカ('78)

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