老嬢探偵 ミス・モード・シルヴァー
(Miss Maud Silver)

　イギリスの女流作家パトリシア・ウェントワースの生み出した編み物好きで独身の老嬢探偵。ミステリの女王アガサ・クリスティーの生み出した同じく独身で編み物好きな老嬢探偵ミス・マープルとは何かと比較される存在です。

　ただしマープルが純然たるアマチュア探偵として事件に顔を出すのとは異なり、こちらは報酬をきちんととる私立探偵として活躍。
常に編み物を手放さず、アルフレッド・テニスンの詩句を引用するのが特色で、見かけは小柄で古色蒼然としたヴィクトリア朝時代の婦人といった感じなのですが、それを隠れ蓑にして鋭い人間観察をもとに手がかりを集め、いつの間にか事件の真相にたどり着いてしまっているという手法は、Ｇ・Ｋ・チェスタトンのブラウン神父をはじめとした古今東西の名探偵たちにも通じるものがあります。

　また探偵を生業にするという自立した女性像は現代の女性像と通じるものがあり、また元々著者のウェントワースがロマンス小説を書いていたこともあって、時には安価な報酬で事件を引き受け悩める登場人物たちのロマンスの手助けをする場合も多く見られます。

　そういった作風もあってか特にアメリカでの人気が高く、近年になって再評価著しいシリーズです。