シェイクスピアの研究でも有名な大学教授

UK マイクル・イネス
(Michael Innes)

ある詩人への挽歌
「ある詩人への挽歌」
(1938年)
(社会思想社)

 イギリスの推理小説家で、江戸川乱歩からはマージェリー・アリンガム、ニコラス・ブレイク、ナイオ・マーシュらとともに、英国”新本格派”の代表的作家の一人と評されています。

 各地の大学教授を歴任し、シェイクスピアなどの文学研究・評伝でも高い評価を得ている人物で、生涯作家生活と研究生活を並行して行っていました。

 イネスのミステリ作家としてのデビュー第1作の誕生は、1937年、オーストラリアへの6週間の航海の途上でのことだったそうです。

 教授に推薦してもらえたにもかかわらず、自分にはこれといった著書が一つもなかったため、推理小説の筆を執り、自らの教授昇進の祝いとしたのだと後年イネスは語っています。そうして発表されたのがアプルビイ警部シリーズの第1長編「学長の死」でした。

 その後は毎年一冊のペースで作品を発表し続けましたが、彼のミステリ作品のほとんど全てにはこの「学長の死」に登場したアプルビイ警部が登場。シリーズが進むにつれて警部は順調な出世街道を歩んでいきます。

アプルビイの事件簿
「アプルビイの事件簿」
(東京創元社)

 イネスの作品は文学的教養、とくにシェイクスピアなどの古典的教養に裏打ちされたプロットにあるため、日本はもとよりアメリカ人でさえも好みが分かれる作家といわれています。そのためそのようなくせのあまりない短編のほうが親しみやすいかもしれません。

 彼の代表作は、長編では「ハムレット復讐せよ」や江戸川乱歩が1935年以降の海外長編ベスト10の5位に選んだ「ある詩人の挽歌」で、初期作品に評価が集中しているようです。

 また短編の方では、アプルビイ警部の第1短編集「アプルビイ語る」がクイーンの定員にも選ばれています。


■作家ファイル■

本名
ジョン・イネス・マッキントッシ・スチュワート (John Innes Mackintosh Stewart)
出身地
イギリス、エディンバラのはずれで生まれる
学歴・職歴
エジンバラ・アカデミー、オックスフォード大学オリエル・カレッジ卒
英語学名誉文学博士、南オーストラリアのアデレード大学教授、シアトルのワシントン大学教授、オックスフォード大学準教授を歴任
生没
1906年9月30日~1994年11月12日
作家としての経歴
1937
オーストラリアのアデレイド大学から英語学教授になるよう誘いをうけ、その6週間の航海の途上で、初のアプルビイ譚「学長の死」を完成させる
以降、毎年一冊のペースで長編を発表し続ける全部で45の長編と3つの短編集、普通小説も26冊発表している
1945
エラリイ・クイーン・ミステリ・マガジンの短編コンテストに応募、見事三位になる。それ以降アプルビイものの短編も発表するようになる
1954
第1短編集「アプルビイ語る」を発表
シリーズ探偵
ジョン・アプルビイ警部 (Inspector John Appleby)
キャドーヴァー警部
ヒルデバート・ブロンコフ
チャールズ・ハニーバス教授
代表作
【アプルビイ警部】
「ある詩人への挽歌」「ハムレット復讐せよ!」
【ノンシリーズ】
「海から来た男」
ランキング
EQアンケート74位

■著作リスト■

1 アプルビイ警部登場作品リスト

2 その他の作品

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 From London Far
(米 The Unsuspected Chasm)
1946 -
2 What Happend at Hazlwood - キャドーヴァー警部
3 The Journeying Boy
(米 The Case of the Jouneying Boy)
1949 -
4 Christmas at Candleshoe
(CandleShoe)
1953 -
5 海から来た男 1955 ちくま世界ロマン文庫12(新装版)('78)
ちくま世界ロマン文庫11('70)
心理的冒険小説
6 Old Hall, New Hall
(米 A Question of Queens)
1956 -
7 The New Sonia Wayward
(米 The Case of Sonia Wayward)
1960 -
8 Money from Holme 1964 - ヒルデバート・ブロンコフ
9 A Change of Heir 1966 -
10 The Mysterious Commission 1974 - チャールズ・ハニーバス教授
11 Honeybath's Haven 1977 -
12 Going It Alone 1980 -
13 Lord Mullon's Secret 1981 -

【短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 A Test of Identity
鏡の顔
1955 HMM'86.9
2 Mysterious Affair at Elsinore
ハムレット異聞
EQMM'64.3
3 A Case of Headlong Dying 1973 -
4 The Secret in the Woodpile
ウッドパイルの秘密
1975 バベル・プレス「本の殺人事件簿─ミステリ傑作20選1」('01)
5 ペリーとカリス 1979 講談社文庫「13の判決」('81)

【評論・エッセイその他】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Death As a Game
ゲームとしての死
HMM'75.7 エッセイ

【参考】「アプルビイの事件簿」(東京創元社 創元推理文庫)
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