パリをこよなく愛した作家

エリオット・ポール
(Elliot Paul)
〔別名　ブレット・ラトレッジ (Brett Rutledge)〕

「不思議なミッキー・フィン」
（1939年）
（河出書房新社）

　アメリカの推理小説家で、ジャーナリストとしても活躍した人物です。本国では文芸誌〈トランジョン〉を編集した文学者としてもよく知られていたといいます。

　マサチューセッツ州のボストンのすぐ北の地方都市モールデンに生まれ、地元の高校を卒業後技師の兄についてダム建設や灌漑事業のプロジェクトに参加し、次いでボストンの新聞社に勤めて文筆活動を開始します。

　その後第一次世界大戦に従軍した後はパリに移って長い間ユシェット通りに住み、フリーランスの記者として活躍。ＡＰ通信や〈トリビューン〉、〈ニューヨーク・ヘラルド〉紙などの各新聞の文学欄も担当し、その傍ら1927年には初期のガートルード・スタイン、ジェイムズ・ジョイス、ヘミングウェイらに作品を発表する機会を与えた文芸誌〈トランジョン〉の創刊にも携わっています。

　そして記者時代の著作としては1937年に発表した内乱時のスペイン滞在記「Life and Death of a Spanish Town（スペインのある町の生と死）」や1942年に発表した大戦中のパリの回想記「The Last Time I Saw Paris（最後にパリを見たとき）」が有名です。

「ルーヴルの怪事件」
（1940年）
（東京創元社）

　ミステリ作家としては1939年に「不思議なミッキー・フィン」でデビュー。以後はこの作品で探偵役を務めた”パリのアメリカ人”こと遊び人の素人探偵ホーマー・エヴァンズとその個性的な仲間たちの活躍するユーモアでファース色の濃い本格作品を発表して人気を集めました。他にも映画の脚本や自伝、音楽書なども手掛けています。

　後にパリに移り住んだことからも分かるように、彼はフランスやパリに深い愛着を抱いていたらしく、推理小説もそのほぼ全てがパリを舞台に描かれています。

■作家ファイル■

出身地

アメリカ、マサチューセッツ州モールデン

学歴

メイン大学卒

生没

1891年2月10日～1958年4月7日

作家としての経歴

1927

文芸誌〈トランジョン〉の創刊に携わる

1937

1931年から36年までスペインのイビザ島で暮らす。その時の思い出を綴った内乱時のスペイン滞在記「Life and Death of a Spanish Town（スペインのある町の生と死）」を発表し、作家としての名声を確立する

1939

モダン・エイジ・ブックス社より「不思議なミッキー・フィン」でミステリ作家としてデビュー
以後主にホーマー・エヴァンズを主人公とする作品を発表（８長編１中編）

1942

大戦中のパリの回想記「The Last Time I Saw Paris（最後にパリを見たとき）」を発表

シリーズ探偵

遊び人探偵ホーマー・エヴァンズ (Homer Evans)

代表作

「不思議なミッキー・フィン」
「ルーヴルの怪事件」

■著作リスト■

１　ホーマー・エヴァンズ登場作品リスト

【長編】

【中短編集】

２　その他の作品

【長編】

【中短編集】

【ミステリ以外の作品】

【映画脚本】

【参考】「不思議なミッキー・フィン」（河出書房新社　河出ミステリ）
「ルーヴルの怪事件」（東京創元社　世界推理小説全集）

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