リーガル本格の雄

UK シリル・ヘアー
(Cyril Hare)

法の悲劇
「法の悲劇」
(1942年)
(早川書房)

 イギリス黄金時代後期にデビューした本格推理作家。

 1900年という節目の年に代々法曹家を輩出してきたというイギリスのサリー州の名家に生まれ、オックスフォード大学を卒業の後は法廷弁護士、裁判所判事として法曹界で活躍していました。

 推理小説を書き始めた動機は収入の少なさを補うためだったらしく、公務の傍らに自らの法務経験を活かした〈リーガル本格〉と位置づけられる推理小説を書き上げ、1937年に長編「死のテナント」で作家デビューを果たします。

 そして法曹界出身の作家にありがちな法律の知識に偏するということもなく、「動機と機会」を最重要視した質の高い本格作品を発表しています。

 またそれに加えて彼の作品は人物描写も細やか且つイギリス・ミステリー伝統の諷刺の効いたユーモア精神に溢れていて、大人の読み物としても充分に耐えうる重厚で味わいの深い仕上がりになっています。

英国風の殺人
「英国風の殺人」
(1951年)
(国書刊行会)

 全部で9つの長編と30あまりの短編を発表し、その初期作品ではスコットランド・ヤードのマレット警部が活躍。その後「法の悲劇」から登場した弁護士フランシス・ぺティグルーとマレット警部がしばらく共演した後、最後はぺディクルー弁護士が単独で活躍する作品に変わります。

 その他にも評論家としても活躍していて、いくつかの評論を残しています。


■作家ファイル■

本名
アルフレッド・アレグザンダー・ゴードン・クラーク (Alfred Alexander Gordon Clark)
出身地
イギリス、サリー州ミックルハム
学歴・職歴
ラグビー校からオックスフォード大学
1924年、法廷弁護士免許を取得、イナーテンプル法学院に所属
生没
1900年~1958年
作家としての経歴
1937
マレット警部ものの第1作「死のテナント(Tenant for Death)」でデビュー
1942
代表作の長編「法の悲劇を発表
シリーズ探偵
マレット警部 (Inspector Mallett)
フランシス・ぺティグルー弁護士 (Francis Pettigrew)
代表作
【ぺティグルー】
「法の悲劇」「風が吹く時」
【ノンシリーズ】
「英国風の殺人」

■著作リスト■

1 マレット警部登場作品リスト

2 フランシス・ぺティグルー弁護士登場作品リスト

3 その他の作品

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 英国風の殺人 1951 国書刊行会 世界探偵小説全集6('95) 歴史学者ボトウィンク博士が探偵役

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Best Detective Stories of Cyril Hare 1959 - マイケル・ギルバート編
マレット2編、ペティグルー2編他全30編
1 "Where there's a will"
(The will)
-
2 Miss Burnside's Dilemma
ミス・バーン・サイドのジレンマ
HMM'95.7
3 Murderer's Luck
(The Unluckiest Murderer)
-
4 The Tragedy of Young Macintyre -
5 It Takes Two
過ぎたるは…
HMM'78.11
6 Death of a Blackmailer -
7 The Boldest Course
(The Old Flame)
もっとも大胆な手口
(昔の恋人)
HMM'96.12
HMM'80.9
8 "As the Inspecter Said" -
9 Death Among Friends -
10 The Story of Hermione -
11 A Surprise for Christmas -
12 The 24-Carat Heel
金箔つきのげす野郎
EQMM'57.7
13 The Rivals -
14 I Never Fofget a Face -
15 A Life for Life -
16 The Markhampton Micarcle
マークハンプトンの奇跡
EQ'97.9
17 A Very Useful Relatitonship -
18 Sister Bessie
義妹ベッシー
HMM'79.1
19 Line Out of Order -
20 Dropper's Delight -
21 Monday's Child
月曜日の子供
HMM'78.3
HMM'71.9
Children
子供たち
22 Tuesday's Child
(Sermon in Bags)
火曜日の子供
(バッグの教訓)
HMM'78.3
HMM'85.5
23 Wednesday's Child
水曜日の子供
HMM'78.3
24 Thursday's Child
木曜日の子供
HMM'78.3
25 Friday's Child
金曜日の子供
HMM'78.3
26 Saturday's Child
(The Euthanasia of Hilary's Aunt)
土曜日の子供
(メアリー伯母さんの安楽死)
HMM'78.3
HMM'69.7

【ジュヴナイル】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Magic Bottle 1946 - ジュヴナイル・ファンタジー

【エッセイ・評論その他】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 推理小説の古典的形式 三一書房「推理小説をどう読むか」('71) エッセイ

【参考】「英国風の殺人」(国書刊行会 世界探偵小説全集)
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