独特の都会的センスを持ったユーモア本格女流作家

USA クレイグ・ライス
(Craig Rice)
〔別名 ジプシー・ローズ・リー(Gypsy Rose Lee)〕
〔別名 マイケル・ヴェニング(Michael Venning)〕

スイート・ホーム殺人事件
「スイート・ホーム殺人事件」
(1944年)
(早川書房)

 アメリカの女流ミステリー作家で、独特の都会的センスを持ち、ドーヴァー主任警部シリーズで有名なイギリスの女流本格作家ジョイス・ポーターと並び称されるユーモア本格の代表的作家です。

 この点自身の新聞記者・ラジオ脚本家・プロデューサーなどの豊富な職業経験を活かし、クレイグ・ライス名義をはじめとするたくさんの名義を用いて数多くの作品を残しています。 また1946年にはミステリー作家としては初めて〈タイム〉誌の表紙を飾ったことでも知られています。

 イリノイ州のシカゴに生まれますが、幼少時代を専ら父方の叔母や叔父夫妻に預けられて育ち、10代後半から早くもジャーナリストとして活躍をはじめ、20代初めにはすでにラジオの放送作家・プロデューサーになっていたそうです。

 ミステリ作家としてのデビューは1939年発表のJ・Jマローン弁護士もの長編第1作「時計は三時に止まる」で、これ以降マローン弁護士とジェイク&ヘレンの3人のドタバタをユーモアたっぷりに描いた本格シリーズを発表して人気を集めました。

眠りをむさぼりすぎた男
「眠りをむさぼりすぎた男」
(1942年)
(国書刊行会)

 またノン・シリーズではありますが、自身とその子供たちをモデルに書き上げたと言われる、アメリカの普通の家庭に起きた殺人事件をユーモアたっぷり描いた長編「スイート・ホーム殺人事件」は、謎解きに加えてほのぼのとして温かみのある語り口が好評で、ライスの一番の代表作として挙げられることの多い作品です。

 他にも写真屋のビンゴと抜群の記憶力の持ち主ハンサムが活躍するシリーズや、ジプシー・ローズ・リー名義やマイケル・ヴェニング名義での長編、更にはアメリカ黄金時代を代表する本格作家スチュアート・バーマーと合作した短編集も1冊発表しています。

 しかし、度重なる離婚や仕事のストレスからアルコール依存症になり、それが原因で49歳の若さでこの世を去りました。

 ライスの作品は本国アメリカでは長い間非常に入手困難だったそうですが、日本では彼女の人気も高く、長編は多くの作品が比較的入手もしやすい方であり、喜ばしい限りです。


■作家ファイル■

本名
ジョージアナ・アン・ランドルフ (Georgiana Ann Randolph)
出身地
アメリカ、イリノイ州シカゴ
生没
1908年~1957年8月28日(49歳)
作家としての経歴
1939
マローンものの長編「時計は三時に止まる」でデビュー
1957
長編「マローン御難」を発表。直後に急死
未完の長編「エイプリル・ロビン殺人事件」は1958年、エド・マクベインによって補筆される。
シリーズ探偵
J・J・マローン (John Joseph Malone)&ヘレン&ジェイク
街頭写真師ハンサム&ビンゴ (Traveling Photographers Bingo Riggs and Handsome Kusak)
カーステアズ三姉弟 (April, Dinah and Archie Carstairs)
ジプシー・ローズ・リー (Stripper Gypsy Rose Lee)
メルヴィル・フェア (Melville Fairr)
代表作
【マローン弁護士】
「大はずれ殺人事件」「大あたり殺人事件」
【ノンシリーズ】
「眠りをむさぼりすぎた男」「スイート・ホーム殺人事件」
ランキング
EQアンケート21位
ハヤカワベスト100・17位

■著作リスト■

1 J・J・マローン刑事弁護士登場作品リスト

2 街頭写真師ハンサム&ビンゴ登場作品リスト

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 セントラル・パーク事件 1942 早川文庫28-8
HPB332
2 七面鳥殺人事件 1943 HPB480
3 エイプリル・ロビン殺人事件 1958 HPB524 未完
エド・マクベインが補筆

3 ジプシー・ローズ・リー登場作品リスト

すべてジプシー・ローズ・リー名義

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Gストリング殺人事件 1941 汎書房('50)
別冊宝石116('63)
2 ママ、死体を発見す 1942 論創社 論創海外ミステリ48('06) 邦訳はクレイグ・ライス名義

4 メルヴィル・フェア登場作品リスト

すべてマイケル・ヴェニング名義

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 眠りをむさぼりすぎた男 1942 国書刊行会 世界探偵小説全集10('95) 邦訳はクレイグ・ライス名義
2 もう一人のぼくの殺人 1943 原書房 ヴィンテージ・ミステリー・シリーズ('00) 邦訳はクレイグ・ライス名義
3 Jethro Hammer 1944 -

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Murder, Mystery and Malone 2002 - マローンもの10編他
全12編
1 How Now, Ophelia
どうしたオフィーリアよ
(何とした、オフィリア)
1947 HMM'91.5
別冊宝石81('58)
マイケル・ヴェニング名義
2 Death in the Moonlight
月明かりの死
1953 HMM'96.7 マイケル・ヴェニング名義

5 その他の長編・短編

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Telefair
(Yesterday's Murder)
1942 -
2 To Catch a Thief 1943 - ダフネ・サンダース名義
3 スイート・ホーム殺人事件
(甘美なる殺人)
1944 早川文庫28-9(新訳版)
早川文庫28-1
HPB335
宝石'50.6
カーステアズ三姉弟
ハヤカワベスト100・15位
EQアンケート28位
4 Crime on My Hands - ジョージ・サンダース名義
クリーヴ・カートミルとの合作
5 居合わせた女 1949 HPB618

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Murderers 1952 - 犯罪実話集

【邦訳短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Quiet Day in the Country Jail
静かな田舎警察の一日
1953 マンハント'60.4
2 The Last Man Alive
最後に生き残った男
HMM'86.3
3 The Murdered Magdalen
ある女の死
HMM'96.12
4 三人の殺人者 別冊宝石126('64) 犯罪実話

【評論・エッセイその他】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Murder Makes Merry
殺人は笑える
(殺人って楽しいわよ)
成甲書房「ミステリの美学」('03)
HMM'69.10
エッセイ

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