ARG ホルへ・ルイス・ボルヘス
&アドルフォ・ビオイ=カサーレス
(Jorge Luis Borges and Adolfo Bioy Casares)

ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件
「ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件」
(1942年)
(岩波書店)

 ともにアルゼンチンの小説家で、20世紀を代表する文学者でもあるルイス・ボルヘスとSF・幻想小説を得意とした小説家ビオイ=カサーレスの二人が合作する際に使ったペンネームです。

 当時ラテンアメリカをはじめとする欧米の思想・文学を紹介する雑誌として有名だった〈スル〉誌の編集長を務め、アルゼンチンの文壇における女王的な存在であったビクトリア・オカンポの紹介で知り合った二人は、元々文学好きだったこともあって、毎週のように食事をしながら文学談義に興じる間柄となります。

 そして、そのような経緯から〈時機はずれ(デステイエンポ)〉という名前の文芸雑誌を共同で出版することとなりますが、残念ながらこれは3号までしか続きませんでした。

 しかし今度は二人で短編小説を書いてみようという話になり、盲目という闇の中に閉じ込められた名探偵のマックス・カラドスにならって、牢に閉じ込められた名探偵ドン・イシドロ・パロディを思いつき、このキャラクターを主人公とするG・K・チェスタトン風の短編をいくつか書き上げます。

 そしてそれが前述のビクトリア・オカンポの目に留まり、1942年〈スル〉誌に「世界を支える十二宮」と「ゴリアドキンの夜」の2編が掲載され、更に同じ年、「ドン・イシドロ=パロディ 六つの難事件」というタイトルで同社から単行本として刊行される運びとなります。

 その後も二人は共作を続け、いくつかの短編集と映画シナリオをものにしています。


■作家ファイル■

出身地
アルゼンチン
生没
■ホルへ・ルイス・ボルヘス(1899年~1986年)■
 別名H・ブストス・ドメック(Homorio Bustos Domecq)。20世紀を代表する文学者の一人で、1961年にフォルメントール賞を受賞

 短編小説だけでなく、エッセイや翻訳などにも活躍し、またG・K・チェスタトンやW・ウィルキー・コリンズ、アイザック・アシモフらの探偵小説の熱心な読者でもあったそうです

 1955年に国立図書館の館長に就任し、1975年には世界文学全集の「バベルの図書館」の編纂にも携わりました。1980年にセルバンテス賞を受賞

■アドルフォ・ビオイ=カサーレス(1914年~1999年)■
 SF・幻想小説の分野で活躍していたアルゼンチンの小説家。1990年にセルバンテス賞を受賞
作家としての経歴
1942
〈スル〉誌の同年1月号と3月号に「世界を支える十二宮」と「ゴリアドキンの夜」を掲載
同年、これらのイシドロ・パロディものを収めた短編集で、二人の共作第一作目となる「ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件」をスル社より刊行
シリーズ探偵
ドン・イシドロ・パロディ (don Isidro Parodi)
代表作
【イシドロ・パロディ】
「ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件」
【ボルヘス単独作品】
「ブエノスアイレスの熱狂」「伝奇集」「エル・アレフ」
【カサーレス単独作品】
「モレルの発明」

■著作リスト■

1 ドン・イシドロ・パロディ登場作品リスト

2 その他の二人の共作

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 ふたつの記憶に価する幻想 1946 - H・ブストス=ドメック名義
2 ボルヘス怪奇譚集 1955 晶文社クラシックス('98)
晶文社('76)
3 天国・地獄百科 1960 書肆風の薔薇 アンデスの風叢書('82)
水声社 叢書アンデスの風('91)
4 ブストス=ドメックのクロニクル 1967 国書刊行会('01)
国書刊行会 ラテンアメリカ文学叢書1('77)
5 ブストス=ドメックの新しい短編 1977 - 1940年代から1972年までの間に書かれた短編を集めたもの

【映画脚本】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 ならず者 1955 - 冒険もの
2 信者たちの楽園 - 冒険もの

3 ボルヘスの主な著作リスト

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 論議 1932 国書刊行会 ボルヘス・コレクション('01) 全20編のエッセイ集
2 汚辱の世界史
(悪党列伝)
1935 集英社 ラテンアメリカの文学('84)
集英社 世界の文学9「伝奇集/他」('78)
晶文社('76)
3 伝奇集 1944 岩波文庫('93)
福武書店('90)
集英社 ラテンアメリカの文学('84)
集英社 世界の文学9「伝奇集/他」('78)
集英社 現代の世界文学('75)
集英社 世界の文学34「伝奇集/他」('68)
4 エル・アレフ
(不死の人)
1949 平凡社ライブラリー('05)
白水社 白水Uブックス114('96)
白水社('68)
集英社 ラテンアメリカの文学('84)
集英社 世界の文学9「伝奇集/他」('78)
集英社 現代の世界文学('75)
集英社 世界の文学34「伝奇集/他」('68)
5 続・審問 1952 国書刊行会 ボルヘス・コレクション(近刊予定)
6 他者 自身 1964 -
7 幻獣辞典 1968 晶文社クラシックス('98)
晶文社('74)
マルガリータ・ゲレロ共著
8 ブロディーの報告書 1970 白水社 白水Uブックス53('84)
白水社('74)
11編
9 砂の本 1975 集英社文庫
集英社 現代の世界文学('80)
10 ボルヘスとわたし 自撰短篇集 ちくま文庫('03)
新潮社('74)

【詩集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 ブエノスアイレスの熱狂 1923 大和書房('77)
2 創造者 1960 国書刊行会 世界幻想文学大系15('75)
3 エル・オトロ、エル・ミスモ 1964 水声社('04)
4 永遠の薔薇 1975 国書刊行会 文学の冒険「永遠の薔薇・鉄の貨幣」('89)
5 鉄の貨幣 1976
6 ボルヘス詩集 思潮社 思潮社海外詩文庫('98)

【評論・エッセイその他】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 無限の言語 1925

1928
国書刊行会 ボルヘス・コレクション('01) 「審問」「わが期待の規模「アルゼンチン人の言語」から選んだ初期評論集
2 エバリスト・カリエゴ 1930 国書刊行会('02)
国書刊行会 ラテンアメリカ文学叢書9('78)
ブエノスアイレスへのオマージュ
3 永遠の歴史 1936 ちくま学芸文庫('01)
筑摩書房('86)
哲学的エッセイ集
4 異端審問 1952 晶文社('82)
5 ボルヘスのイギリス文学講義 1965 国書刊行会 ボルヘス・コレクション('01)
6 ボルヘスの北アメリカ文学講義 1967 国書刊行会 ボルヘス・コレクション('01)
7 序文つき序文集 1975 国書刊行会 ボルヘス・コレクション('01) 生涯書いた200以上の序文のセレクション
8 夢の本 1976 国書刊行会('92)
国書刊行会 世界幻想文学大系13('83)
9 パラケルススの薔薇 1977 国書刊行会 バベルの図書館22('90)
10 ボルヘス、オラル 1978 書肆風の薔薇 叢書アンデスの風('87)
水声社 叢書アンデスの風('91)
晩年の故国アルゼンチンにおける連続講演の全訳
11 七つの夜 1980 みすず書房('97)
12 ボルヘスの『神曲』講義 1982 国書刊行会 ボルヘス・コレクション('01)
13 アトラス 迷宮のボルヘス 1985 現代思潮新社 エートル叢書('00)
14 ボルヘスとの対話 国書刊行会('78) ジョルジュ・シャルボニエ著
15 ボルヘス、文学を語る 詩的なるものをめぐって 岩波書店('02) 1967年から翌年にかけてハーバード大学でなされた講義のCD

4 ビオイ=カサーレスの著作リスト

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 モレルの発明 1940 書肆風の薔薇 叢書アンデスの風('90)
水声社 叢書アンデスの風('91)
2 脱獄計画
(空色のプロット)
1948 現代企画室 ラテンアメリカ文学選集9('93)
3 El sueno de los heroes
ヒーローたちの夢
1954 -
4 豚の戦記 1969 集英社文庫('94)
集英社 ラテンアメリカの文学9('83)
5 日向で眠れ 1973 集英社 ラテンアメリカの文学9('83)
6 La aventura de un fotografo en La Plata 1985 -
7 Un campeon desparejo 1993 -
8 De un mundo a otro 1997 -

【参考】「ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件」(岩波書店)
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