EQMM短編コンテスト入選の常連

USA A・H・Z・カー
(Albert H. Zolatkoff Carr)

誰でもない男の裁判
「誰でもない男の裁判」
(2004年)
(晶文社)

 アメリカの小説家。政治経済学者として活躍し、第二次大戦中に政府機関に入り、後にフランクリン・ルーズヴェルト大統領の経済顧問やハリー・トルーマン大統領の特別顧問も務めています。

 小説家としては歴史ものや伝記、ビジネス関連書などを発表していましたが、ミステリに関しては1949年にエラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン〈EQMM〉に短編を発表して以来、毎年EQMMに短編を発表し、短編コンテストの上位にランクされるなど、ロアルド・ダールやスタンリイ・エリンと並ぶ短編の名手として知られています。

 本人曰くミステリを書くのは正気を保つためだといい、1971年には69歳にして初の長編「妖術師の島」を発表し、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞新人賞に輝いています。

 その作風は彼の歩んできた職業にふさわしく政治の世界がよく舞台となり、知的で上品かつ味わい深いものがあります。


■作家ファイル■

出身地
アメリカ、シカゴ
学歴
シカゴ大学、コロンビア大学で学び、ロンドン大学でも経済学を専攻
生没
1902年1月15日~1971年10月28日
作家としての経歴
1949
1935年に他誌で発表していた短編「「勘で勝負する男」でエラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン〈EQMM〉に応募
以後1950年代を中心に短編を次々とEQMM誌上に発表。1950年「誰でもない男の裁判」と1951年「市役所殺人事件」で短編コンテスト第2位に、1956年「黒い子猫」で第1位に輝く
1971
最初にして最後の長編「妖術師の島」を発表し、翌年のアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞新人賞を受賞
この他ミステリ以外では歴史ものが4冊、伝記が4冊、ビジネスものが3冊、他にA. B. Garbury名義で「The Girl With the Glorrious Genes」という普通小説を発表している
シリーズ探偵
なし
代表作
「妖術師の島」
「誰でもない男の裁判」「市役所殺人事件」「黒い小猫」(いずれも短編)

■著作リスト■

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 妖術師の島 1971 HPB1212 MWA賞処女長編賞('72)
唯一の長編

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 誰でもない男の裁判 2004 晶文社 晶文社ミステリ 日本独自の編纂
1 黒い小猫 1956 早川文庫「黄金の13/現代篇」('79)
EQMM'56.2
EQMM短編コンテスト1位
2 虎よ! 虎よ! 1952 EQMM'58.4
3 誰でもない男の裁判 1950 EQMM'58.9
HMM'89.8
EQMM短編コンテスト2位
4 猫探し 1954 EQMM'60.4
5 市庁舎の殺人
(市役所殺人事件)
1951 EQMM'61.3 EQMM短編コンテスト2位
6 ジメルマンのソース
(お代は舌で)
1957 河出文庫「美食ミステリー傑作選
大和書房「とっておきの特別料理」('83)
HMM'78.9
7 ティモシー・マークルの選択
(わが家のホープ)
1969 HMM'72.9
8 姓名判断殺人事件 1965 HMM'81.3

【その他の邦訳中短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Man Who Playd Hunches
勘で勝負する男
1935 EQMM'59.6 最初の発表作
2 The Crucial Twist
決定的なひとひねり
1940 EQMM'61.9
3 Hit and Run
轢き逃げ
1949 EQMM'58.2
4 If a Body...
誰かと誰かが……
1953 EQMM'60.10
5 A Sudden Dread...Nothing
復讐
1955 EQMM'62.1
6 女心を読む男
(女心を識る男)
1960 光文社文庫「世界ベスト・ミステリー50選/下」('94)
EQMM'60.6
7 A Handful of Dust
一握の土
EQMM'61.4
8 The Washington Party Murder
ワシントン・パーティーの殺人
1964 EQMM'65.12

【普通小説】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Girl with the Glorious Genes 1968 - A・B・カーベリー名義
冷戦を題材にとった普通小説

【その他の著書】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 「幸運の人」になる技術 1952 成甲書房('03) 自己啓発書
2 ビジネスはゲームだ 1968 早川書房('69) アルバート・Z・カー名義
ビジネス書

【参考】「誰でもない男の裁判」(晶文社 晶文社ミステリ)
「妖術師の島」(早川書房 ハヤカワポケットミステリ)
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