ホームズのピンチヒッター

UK マーティン・ヒューイット
(Martin Hewitt)

マーチン・ヒューイットの事件簿
「マーチン・ヒューイットの事件簿」
(1894年、1895年)
(東京創元社)

 イギリスの小説家アーサー・モリスンの生みだした素人探偵。名探偵シャーロック・ホームズがあまりにも有名な「最後の事件」でスイスのライヘンバッハの滝壺に姿を消した後、〈ストランド・マガジン〉誌上にその後釜として連載されたのがこのマーチン・ヒューイットを主人公とするシリーズでした。

 元々はクレラン・ハントアンド・クレラン法律事務所事務員でしたが、バートレイ事件を解決して有名になったのを機に独立。ストランド街近くの古いビルに探偵事務所を構えます。

 その容貌は背は中背で丸顔で恰幅の良い人好きのする人物で、一見すると平凡な人物にも見えるのですが、実はこの”目立たない”というところが彼の最大の長所であり、得意の変装であらゆる階層に溶け込み、その事情に通じることができるのです。

 ヒューイット譚はホームズのライヴァルとして位置づけられてはいるものの、ホームズのような超人的な活躍や華やかさには欠けるかもしれません。しかし、凡人型の探偵が調査を積み重ねていくことで事件を解決するという新しいスタイルが、このシリーズによって確立したといえるでしょう。

シャーロック・ホームズのライヴァルたち1
「シャーロック・ホームズのライヴァルたち1」
(早川書房)

 1894年から1903年にかけて発表されたシリーズ全25短編は4冊の短編集に収録されていて、物語では友人の新聞記者ブレットがその語り役を務めます。


■原作■

アーサー・モリスン
(Arthur Morrison 英 1863-1945)


■人物ファイル■

職業
ロンドン銀行・大手保険会社の顧問探偵
ストランド街の近くの古いビルに探偵事務所を構える
専門
法律と統計
特技
変装
協力者
ワトソン役の新聞記者ブレット
下宿の家政婦クレイトン夫人
事件簿
4冊の短編集に全25短編で登場

■事件ファイル■

【邦訳短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 マーチン・ヒューイットの事件簿 1978 創元推理文庫181-1 日本独自の編纂

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Martin Hewitt, Investigator
(探偵マーティン・ヒューイット)
1894 創元推理文庫181-1「マーチン・ヒューイットの事件簿」(1を除く) クイーンの定員18
1 レントン館盗難事件 1894 創元推理文庫100-1「世界短編傑作集1」('60)
HPB250「名探偵登場1」('56)
東京創元社 世界推理小説全集71「世界短篇傑作集3」('59)
別冊宝石38('54)
2 サミー・クロケットの失踪
(サミー・スロケットの失踪)
(短距離ランナー消失事件)
光文社文庫「クイーンの定員 I」('92)
HMM'78.5
3 フォガット氏の事件
4 ディクソン魚雷事件
(魚雷設計図盗難事件)
早川文庫87-3「シャーロック・ホームズのライヴァルたち1」('83)
HMM'74.9
5 クイントン宝石事件 HMM'74.2
6 スタンウェイ・カメオの謎
(稀代の美術品)
立風書房「新青年傑作選4 翻訳編」('70)
新青年'32夏期増刊
7 亀の事件
(蔦の家の惨劇)
新趣味'22.12
2 Chronicles of Martin Hewitt 1895 -
1 アイヴィ・コテージの謎 1895 創元推理文庫181-1「マーチン・ヒューイットの事件簿
2 〈ニコウバー〉号の金塊事件
(海底の探偵)
創元推理文庫181-1「マーチン・ヒューイットの事件簿
博文館 世界探偵小説全集8「モリスン集」('29)
3 ホールファド遺言状事件 創元推理文庫181-1「マーチン・ヒューイットの事件簿
4 The Case of Missing Hand
ヒュイット探偵
(なくなった手の事件)
新青年'23.7
5 レイカー失踪事件
(ヒュイット探偵)
創元推理文庫181-1「マーチン・ヒューイットの事件簿
パシフィカ 名探偵読本5「シャーロック・ホームズのライヴァルたち」('79)
新青年'24.7
6 The Case of the Lost Foreigner
(迷子の外人事件)
-
3 Adventures of Martin Hewitt 1896 -
1 The Case of the "Flitterbat Lancers"
フリッターバット・ランサーズ事件
1896 HMM'00.6
2 The Case of the Dead Skipper
(亡くなった船長の事件)
-
3 The Case of Mr.Geldard's Elopement
(ジェルダード氏駆け落ち事件)
-
4 The Case of the Mr.Rewse
(故ルーズ氏事件)
-
5 The Case of the Ward Lane Tabernacle
(ウォド小路礼拝堂事件)
-
6 The Affair of Mrs.Seton's Child
二癈人
(セトン夫人の子供の事件)
新青年'39特別増刊
4 The Red Triangle, Being Some Further Chronicle of Martin Hewitt ; Investigator 1903 - 連作短編集
1 The Affair of Samuel's Diamond
(サムエルのダイヤ事件)
1903 -
2 The Case of Mr.Jacob Mason
(ジェイコブ・メーソン氏の事件)
-
3 The Case of the Lever Key
(挺の鍵事件)
-
4 The Case of the Burnt Barn
(焼けた納屋の事件)
-
5 The Case of the Admiralty Code
(海軍本部暗号事件)
-
6 The Adventure of Channel Marsh
(河床湿地帯の冒険)
-

【研究書】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 名探偵読本5 シャーロック・ホームズのライヴァルたち 1978 パシフィカ('78)

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