〈悪徳警官〉もので有名な社会派の犯罪小説作家

USA ウィリアム・P・マッギヴァーン
(William Peter McGivern)
〔別名 ビル・ピーターズ (Bill Peters)〕

殺人のためのバッジ
「殺人のためのバッジ」
(1951年)
(早川書房)

 アメリカの推理小説家。シカゴに生まれ、大学在学中に第二次世界大戦に参戦し、伍長にまで昇進。復員後は〈フィラデルフィア・イヴニング・ブレティン〉紙の記者を務め、その傍らにパルプ・マガジンにミステリーやSF小説を寄稿します。

 1948年になると同じ作家のモーリン・デイリー(Maureen McGivern)と結婚し、同年に第1長編の「囁く死体」を発表。殺人の濡れ衣を着せられた雑誌編集長の必死の捜査活動を描いたいわゆる〈巻き込まれ〉型のサスペンス小説で、評論家のジェイムズ・サンドーらから高い評価を受けます。

 そして1951年に発表した長編「殺人のためのバッジ」では、ギャングから金銭を絞り取る悪徳警官ものを登場させ、これがアメリカ中にセンセーションを巻き起こします。

 その後も長編「ビッグ・ヒート」、「悪徳警官」、そして「最悪のとき」と次々と悪徳警官を主人公に据えた犯罪小説を発表。警察権力の腐敗構造を生々しく描き出す一方で、社会性を前面に押し出し、読む者に一石を投じる社会派のミステリーとして高い評価を勝ち得ています。

悪徳警官
「悪徳警官」
(1954年)
(東京創元社)

 他にもこのような社会性を前面に打ち出した作品として「緊急深夜版」があり、こちらは市長選挙に絡む市政の不敗を激しい怒りとともに克明に描き出し評判を集めました。

 またラジオやテレビの仕事も数多くこなし、ハリウッドでシナリオライターとして数多くの作品を手がけています。

 晩年に入ると普通小説やサイコ・サスペンスなどにも挑戦し、未完の長編「名誉の問題」を残して亡くなりますが、この作品は夫人の手によって完成されました。


■作家ファイル■

出身地
アメリカ、シカゴ
生没
1922年12月6日~1982年11月18日
作家としての経歴
1948
長編「囁く死体」で作家デビュー
1951
悪徳警官ものの第1作「殺人のためのバッジ」を発表
以後「ビッグ・ヒート」「悪徳警官」「最悪のとき」などの悪徳警官ものの傑作を次々と発表
シリーズ探偵
なし
代表作
「殺人のためのバッジ」「ビッグ・ヒート」
「悪徳警官」「最悪のとき」
「緊急深夜版」

■著作リスト■

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 囁く死体 1948 HPB318
2 最後の審判 1949 創元推理文庫134-1
3 虚栄の女 1950 創元推理文庫134-2
4 殺人のためのバッジ 1951 早川文庫29-1
HPB588
早川書房 世界ミステリ全集10('73)
5 ゆがんだ罠 1952 創元推理文庫134-3
6 ビッグ・ヒート 1953 創元推理文庫134-4
7 恐怖の限界 創元推理文庫134-5
8 悪徳警官 1954 創元推理文庫134-6
東京創元社 世界名作推理小説大系22('61)
9 最悪のとき 1955 創元推理文庫134-7
東京創元社 現代推理小説全集2('57)
10 ファイル7 1956 早川文庫29-2
HPB680
11 緊急深夜版 1957 早川文庫29-4
HPB469
12 明日に賭ける 早川文庫29-3
HPB510
13 けものの街 1959 HPB769
14 七つの欺瞞 1960 HPB747
15 The Road to the Snail 1961 -
16 A Pride of Place 1962 -
17 A Choice of Assassins 1963 -
18 The Caper of the Golden Bulls 1966 -
19 Lie Down, I Want to Talk to You 1967 -
20 Caprifoil 1972 -
21 Reprisal 1973 -
22 ジャグラー ニュ-ヨ-ク25時
(夜の曲芸師)
1975 早川書房('80)
HMM'78.11-'79.2
映画化
サイコスリラー
23 1944年の戦士 1979 早川書房('80) 戦記物
24 The Seeing 1980 - 妻モーリン・マッギヴァーンとの合作
25 Summitt 1982 -
26 War Games 1984 -
27 A Matter of Honor
(名誉の問題)
- 未完、妻モーリン・マッギヴァーンの手により完成

【ビル・ピーターズ名義の長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 金髪女は若死する 1952 HPB306 ハードボイルド

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 高速道路の殺人者 1961 HPB782
1 高速道路の殺人者 EQMM'63.3
2 祈らずとも
3 ウィリーじいさん
(スター・ホテルでみたこと)
1953 早川文庫80-3「眠れぬ夜の愉しみ アメリカ探偵作家クラブ傑作選3」('82)
マンハント'59.1
4 デュヴァル氏のレコード
5 ベルリンの失踪

【邦訳短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Peter Fereney's Death Cell
死刑囚監房
1941 講談社文庫「世界ショートショート傑作選1」('78)
奇想天外'74.2
2 Manchu Terror
上海の恐怖
1946 HMM'74.1
3 Death Comes Gift-Wrapped
死の贈り物
1948 HMM'05.6
4 The Galaxy Raiders
星団の侵入者
1950 誠文堂新光社「アメージング・ストーリーズ7」('50)
5 Death Rode the Rails
死は鉄路に乗って
1958 HMM'71.1
6 Ordeal in Darkness
暗黒の試練
1961 EQMM'62.4
7 The Last Word
最後の一言
1963 EQMM'63.5
8 The Walking Corps
(The Dead Walk)
歩く死体
(あるく死体)
HMM'70.5
EQMM'62.3
9 Glory and the Beast
優雅なる生贄
ハードボイルドマガジン'63.12
10 金髪の小娘 探偵倶楽部'58.7増刊 原題不明

【参考】「殺人のためのバッジ」(早川書房 ハヤカワミステリ文庫)
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