アフリカ関連の著書でも有名な女流本格作家

UK エルスペス・ハクスリー
(Elspeth Joscelin Huxley)

サファリ殺人事件
「サファリ殺人事件」
(1938年)
(長崎出版)

 ハックスレーとも表記。イギリスの女流作家。自然保護論者かつ植民地主義者で作家活動以外でもジャーナリスト、ブロードキャスター、植民地役員、政府顧問として活躍した人物です。
 彼女が幼少期を過ごした植民地時代のケニアを描いた自伝的小説であり、後にイギリスの大手民放テレビ局の手で映像化された「The Flame Trees of Thika」と続けて書かれた「The Mottled Lizard」の著作でよく知られています。

 ちなみにハクスリー家というのは科学者を多数輩出したイギリスの学会で非常に著名な一族で、創始者のトーマス・H・ハクスリーはダーウィンの進化論を弁護したことで有名な生物学者、その息子レオナルド・ハクスリーは作家で編集者、レオナルドの息子にはジュリアン、オルダス、アンドリューがいて、そのうちジュリアン・ハクスリーは初代ユネスコ長官でもある生物学者、オルダス・ハクスリーは「すばらしい新世界」で有名な文豪、アンドリュー・ハクスリーは1963年度のノーベル生理学・医学賞を受賞している生物学者と錚々たる経歴の持ち主ばかりです。
 そして彼女の夫ジャーヴァス・ハクスリーはジュリアン、アルダス、アンドリューの三人とはいとこ同士にあたります。

Flame Trees of Thika
「Flame Trees of Thika」
(2005年)
(DVD・海外盤)

 ロンドンに生まれ、1912年に当時のイギリスの植民地でコーヒー農園の盛んだった東アフリカ・ケニアのティカ地区に両親とともに移住。ナイロビのヨーロッパの学校で教育を受け6歳から18歳までの12年間をケニアで過ごします。1925年にはイングランドに戻りレディング大学で農業に関する学位を取得した後、ニューヨークのコーネル大学でも学んでいます。

 その後1929年にイギリス製品を世界に広めるEMB(帝国通商局)の広報担当のアシスタントになると、以後は定期的にアフリカを訪問するようになり、最初の作品である白人入植者の指導者デラメア卿やケニアの創成について綴った「White Man's Country」を1935年に書いたのを皮切りに、アフリカ関連の著書を多数残しています。また1960年代には〈ナショナル・レビュー〉誌の記者としても活躍していました。

 ミステリ作品はカナダ出身でアフリカに赴任したばかりの若手刑事であるヴェイチェル警視の登場する三部作を発表しており、いずれも幼少期に彼女が過ごした植民地時代のケニアを舞台にした本格謎解きミステリーで、中でも2作目の「サファリ殺人事件」は”アガサ・クリスティーの最大のライバル出現”と評されたほどの評判の作品です。


■作家ファイル■

出身地
イギリス、ロンドン
学歴
レディング大学で農業に関する学位を取得後、ニューヨークのコーネル大学でも学ぶ
生没
1907年7月23日~1997年1月10日(89歳)
作家としての経歴
1931
ジャーヴァス・ハックスレーと結婚(のちに長男が誕生)
1935
白人入植者の指導者デラメア卿やケニアの創成について綴った「White Man's Country」を書き上げる
1937
ミステリ長編「Murder at Government House」を発表。以後1939年までにヴェイチェル警視の登場するミステリ三部作を発表している
1959
植民地時代のケニアでの幼少期を描いた自伝的小説「The Flame Trees of Thika」を発表する(のち映像化)
シリーズ探偵
チャニア警視庁刑事部のヴェイチェル警視 (Superintendent Vachell)
代表作
「サファリ殺人事件」
「The Flame Trees of Thika」(自伝的小説)

■著作リスト■

1 ヴェイチェル警視登場作品リスト

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Murder at Government House 1937 -
2 サファリ殺人事件 1938 長崎出版 海外ミステリGemコレクション10('07)
3 Death of an Aryan
(米 The African Poison Murders)
1939 -

2 その他の作品

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Red Rock Wildness 1957 -
2 The Merry Hippo
(米 The Incident at the Merry Hippo)
1963 -
3 A Man from Nowhere 1964 -
4 The Prince Buys the Manor: An Extravaganza 1982 -

【普通小説】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Red Strangers 1939 -
2 The Walled City 1948 -
3 The Thing to Love 1954 -
4 The Flame Trees of Thika 1959 - 植民地時代のケニアでの幼少期を描いた自伝的小説
5 The Mottled Lizard 1962 -

【エッセイ・評論その他】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 White Man's Country : Lord Delamere and the Making of Kenya 1935 - 2巻(1870-1914&1914-1931)で構成
2 East Africa: British Commonwealth in Pictures Series 1941 -
3 Atlantic Ordeal: The Story of Mary Cornish -
4 Race and politics in Kenya: A Correspondence Between Elspeth Huxley and Margery Perham 1944 -
5 The Sorcerer's Apprentic: A Journey Through East Africa 1948 - 旅行記
6 Settlers of Kenya -
7 I Don't Mind If I Do 1950 -
8 Four Guineas: A journey Through West Africa 1954 - 旅行記
9 Q 1955 -
10 A New Earth: An Experiment in Colonialism 1960 -
11 Back Street New Worlds: A look at Immigrants in Britain 1964 -
12 With Forks and Hope: An African Notebook - 画・Jonathan Kingdon
13 Suki: A Little Tiger - 写真・Laelia Goehr
14 Brave New Victuals: An Inquiry into Modern Food Production 1965 -
15 Their Shining Eldorado: A Journey Through Australia 1967 - 旅行記
16 Love Among the Daughters: Memories of the Twenties in England and America 1968 - 回想録
17 The Challenge of Africa 1971 -
18 The Kingsleys: A Biographical Anthology 1973 -
19 Livingstone and His African Journeys 1974 - ヨーロッパ人で初めて、アフリカ大陸を横断した探検家デイヴィッド・リヴィングストンの伝記
20 Florence Nightingale 1975 - 看護婦フローレンス・ナイチンゲールの伝記
21 Scott of the Antarctic 1977 - 南極探検家ロバート・スコットの伝記
22 Nellie Letters from Africa 1980 - 回想録
23 Whipsnade Idea: Captive Breeding for Survival 1981 -
24 Last Days in Eden 1984 - Hugo Van Lawick との共著
タンザニアの自然保護区について
25 Out in the Midday Sun: My Kenya 1985 -
26 Nine Faces of Kenya 1990 -
27 Peter Scott: Painter and Naturalist 1993 - ロバート・スコットの息子ピーター・スコットの伝記
28 Gallipot Eyes: A Wiltshire Diary 1996 -

【編書】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Travels in West Africa 1976 - Mary H. Kingsley 著

【序文】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Run Rhino Run 1981 -
2 Next Year Will Be Better 1985 -
3 The Last of the Maasai 1987 -

【研究書】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Elspeth Huxley: A Bibliography 1996 - Robert S. Cross & Michael Perkin 著の伝記
2 Elspeth Huxley: A Biography 2002 - C. S. Nicholls 著
伝記

【参考】「サファリ殺人事件」(長崎出版 海外ミステリGemコレクション)
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