白いスニーカーがトレードマークの硬派な刑事

JPN 合田雄一郎刑事
(Yuichiro Goda)

マークスの山icon
「マークスの山」
(1993年)
(講談社)

 高村薫の小説に登場する警察官探偵。著者の出世作で直木賞も受賞した「マークスの山」で初登場し、その後「照柿」「レディ・ジョーカー」と続く三部作に登場するほか、雑誌連載された連作短編シリーズでも活躍する姿を見ることができます。

 大阪で生まれ少年時代はずっと関西で生活していましたが、高校の時に父親を亡くしたため、母親の実家のある東京へと転校を余儀なくされます。その後大学に進学すると在学中は司法試験の合格を目指して法律を勉強しますが、不合格が重なったため結局刑事の道を選択します。

 警察に入ってからは長期研修で所轄署と本庁を行ったり来たりしながら捜査畑を10年経験しますが、ノンキャリアの警察官としてはエリート路線を進み、初登場時の「マークスの山」の時には33歳6か月で警視庁捜査一課所属の警部補でした。

 しかし「照柿」で問題行為を起こして所轄の大森署へと異動となり、続く「レディ・ジョーカー」の時点でも所轄署の刑事として活躍していましたが、その後難関の昇進試験を見事に突破し、現在は警視庁国際捜査課所属の警部に昇進しています。

レディ・ジョーカーicon
「レディ・ジョーカー」
(1997年)
(毎日新聞社)

 その仕事ぶりはいったんスイッチが入ると、”警察官僚職務執行法が服を着て歩いているような規律と忍耐の塊”となり、趣味の山登りで鍛え上げられた体力と持ち前の忍耐力で、愛用の白いスニーカーをすり減らしながら粘り強く事件を追いかけていきます。

 性格は”捜査一課230名の中でもっとも口数と雑音が少なく、もっとも硬い目線を持った日陰の石の一つ”とまで評されるほど冷たく、愛想のまったくない硬派な刑事として描かれていますが、その一方で長身でスマートな外見、髪は短く整えられ未だ青年の面影が残る細面の顔立ちは、どこか涼しげで人を惹きつけてやまないものがあります。

 そんな合田刑事が唯一心を許せるのが学生時代からの親友で検事の加納祐介で、彼は茨城県水戸市の出身で、大学三年の時に司法試験に合格したエリートですが、登山やドストエフスキーの文学を愛読するなど共通の趣味を持ち、別れた妻・貴代子の双子のの兄という複雑な関係ながらも深い友情で結ばれています。


■原作■

高村薫
(Kaoru Takamura 日 1953- )


■人物ファイル■

職業
警視庁捜査一課第三強行犯捜査班第七係主任・警部補→大森署刑事課強行係長・警部補→警視庁国際捜査課・警部
出身
大阪府東住吉区(父親を亡くしたため高校2年生から母親の実家のある東京へ転校)
趣味
登山、読書(ドストエフスキーを愛読)
特技
ヴァイオリン(小さい頃から習っていた)
愛用品
トレードマークの白いスニーカー
協力者
別れた妻・貴代子の双子の兄で学生時代からの親友・加納祐介検事

■事件ファイル■

【長編】

No. 事件名 発表年 出版 備考
1 マークスの山 1993 新潮文庫(上下)('11)
講談社文庫(上下)('03)(全面改稿)
早川書房
第109回直木賞
第12回日本冒険小説協会大賞
映画化('95)
2 照柿 1994 新潮文庫(上下)('11)
講談社文庫(上下)('06)(全面改稿)
講談社
3 レディ・ジョーカー 1997 新潮文庫(上中下)('10)
毎日新聞社(上下)
毎日出版文化賞('98)
映画化('04)
4 太陽を曳く馬 2009 新潮社(上下) 福澤家シリーズ(福澤彰之との共演)

【番外】

No. 事件名 発表年 出版 備考
1 新リア王 2005 新潮社(上下) 一シーンのみに登場

【短編】

警視庁捜査第一課第三強行犯捜査第七係シリーズ

No. 事件名 発表年 出版 備考
1 東京クルージング 1993 小説現代'93.4
2 放火(アカ) 小説現代'93.6
3 失踪 小説現代'93.8
4 情死 小説現代'93.10
5 凶弾 小説現代'93.12

【映画】

No. 事件名 発表年 DVD 備考
1 マークスの山 1995 - 主演・中井貴一
監督・崔洋一
2 レディ・ジョーカー 2004 日活('05) 主演・渡哲也、徳重聡(合田)
監督・平山秀幸

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