十津川省三警部
(Inspector Shozo Totsugawa)

　西村京太郎の小説の大多数に登場する警察官探偵。所属は警視庁捜査一課警部。

　東京の新興住宅地に生まれ、学生時代はヨット部に所属しダイビングの経験も持つ海の男でした。一方で太宰治を真似た小説を書き同人誌を発行するなど、文学青年でもあったのだそうです。その後25歳の頃から捜査一課の刑事として活躍を開始します。

　作品での初登場は1973年の長編「赤い帆船」で、当時は30歳で警部補、そして”海のエース”として海洋事件専門に活躍する刑事でした。

　やがて1976年発表の「消えた乗組員」では37歳で警部に昇進、1979年発表の「夜間飛行殺人事件」の時点では40歳になり、それ以後の作品では40歳という設定でほぼ変化はないようです。

　そして1978年発表の「寝台特急殺人事件」からはもっぱら鉄道関係の事件の捜査を担当するようになり、80年代から始まったトラベル・ミステリーのブームの立役者的な存在として、現在でも数多くの作品が映像化されるなど、高い人気を集めています。

　その風貌に関しては初期作品では身長163センチで体重68キロ、中肉中背でその容姿から”タヌキ”とあだ名されているとの記述がありますが、初登場から既に30年以上経過し設定が変化していることもあるためか最近ではあまりこのような記述されていません。現在ではどこか鋼鉄を思わせる身体つきで眼つきも鋭く、女性からも好意を持たれるようなかなりスマートな感じで描かれているようです。

　家族に関しては、初期作品では婚約者がいたものの死別、その後「夜間飛行殺人事件」の時にインテリア・デザイナーの西山直子と結婚して現在に至りますが、まだ子供はいないようです。

　捜査方法はいたって地味で堅実、相棒の亀井刑事をはじめとする部下の刑事たちを使って地道に証拠を集めていく努力型の探偵ですが、ここぞという時に発揮されるその推理力にもなかなかのものがあります。