出版 |
久保書店
Q-Tブックス |
「マッチの用意はいいよ、ナポレオン。エンジンをかけてくれ」
クリヤキンは、マッチをこするとホプウェルのスウェーターに火をつけ、エンジンがかかると同時に、荷室のドアから投げこんだ。道からはずれた車は、勢いよく草の急斜面におどり出た。運転席のドアからソロがすべり落ちると、二、三度回転して草をつかんだ。そばにイリヤが、かけ下りてきた。
車は、しだいにスピードを増しながら、急斜面を走り、荷室の後部ドアから、ぱっと黄色い炎の渦を吐きだした。斜面の下は土手になっていたが、勢いのついた火の車は、大きくバウンドして障害物の上を越えガラス張りのサンルームに鼻面を深く突っこんだ。ものすごい激突音と、みるみるうちに燃えひろがる炎の色が、ソロとクリヤキンを十二分に満足させた。 |