出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
1021 |
包帯がとれたとき、パーカーは鏡に写っている見知らぬ男の顔をのぞきこんだ。それから、その顔に向かってうなずき、鏡の奥に写っている整形外科医の顔を見た。
パーカーがサナトリウムに来てから、すでに4週間といくばくかになっていた。来た当初は、パーカーの顔は鉛の弾を射ちこまれたがっている顔をしていたが、今では誰もわからない、まったく新しい顔になっていた。長くて細長い鼻、平べったい頬、唇の薄い大きな口、そして突き出た顎。ひびのはいった縞めのうに似た、冷たくて厳しい眼─その眼だけは見慣れたいつものやつだったが、それ以外はまったく別の顔になっていた。『人狩り』で悪の限りをつくしたパーカーは、整形して逃亡の顔をつくりあげたのである。
上出来だった。1万8千ドル近くかけただけあった。……パーカーはもう一度新しい顔に向かってうなずくと鏡から向き直り、包帯などを屑かごに捨てた。洋服もすっかり新しく着替えて、サナトリウムを出た。 それは逃亡の顔であるばかりでなく、悪の世界に生きる一匹オオカミ、パーカーの新しい冒険のための顔でもあったのだ……!
悪を悪で制する男、パーカー。ハードボイルド小説に新機軸をひらいた悪党パーカー・シリーズ第2弾! |