不撓不屈の車椅子探偵
鬼警部ロバート・T・アイアンサイド
(Robert T. Ironside)

「交錯の銃弾」
(1967年)
(グロービジョン出版) |
─『サンフランシスコ市警察の刑事部長であった私アイアンサイドは、犯罪に限りない憎しみを抱いていたが、私を恨む犯罪者の一人は、卑怯にも私を撃った。一発の銃弾は私を下半身不随の人間にしてしまった。
署長の厚意から嘱託警部という特別な待遇と自分の足となってくれる三人の部下を与えられた私は、再び憎むべき犯罪に挑むこととなった。
私アイアンサイドは、世に存在する悪を許すことはできないのだ。(テレビ映画「鬼警部アイアンサイド」オープニングより)
〈鬼警部アイアンサイド〉は、1960年代後半から1970年代にかけて、ちょうど刑事コロンボと時を同じくする時代にアメリカで作成されたミステリー・ドラマです。
1967年、まず手はじめにパイロット版のテレビシリーズが放映されて人気を博し、シリーズ化が決定すると同年から1975年にかけて、NBCテレビより全8シーズンに渡って計194話が放映されました。
日本でも1969年よりTBS系で放映が開始され好評だったようで、8シーズン全ての作品が放映されているようです。 |
冒頭のオープニングの抜粋の通り、アイアンサイドは元々はサンフランシスコ市警察の腕利きの刑事部長でしたが、山荘での休暇中に恨みを持つ者によって狙撃され、一命は取りとめたものの下半身不随に陥ってしまいます。
しかし彼の妥協を許さない正義感と犯罪に対する激しい憎しみは決して衰えることはなく、一方市警察側も彼の明晰な頭脳とその姓の通りの「鉄の面」のような堅い意志が市警察から失われることを惜しんだらしく、結局アイアンサイドは署長の厚意により三人の部下を与えられ、市警察本部の3階を改造し、そこを住居兼捜査本部として「嘱託警部」の肩書きで警察の捜査に協力することになります。
このアイアンサイドを支えるのが三人の個性的かつ優秀な部下たちで、警察稼業には勿体無いような端正な顔立ちのベテラン刑事エド・ブラウン、同じく市警察の刑事だった父親を組織ギャングの一員に射殺され、その時の事件でアイアンサイドに助けられて以来チームの一員となった婦人警官のフラン・ベルディング(当初はホイットフィールド巡査だったがのち結婚退職したため交替)、そしてアイアンサイドの車椅子を引くなど彼の身の回りの世話をする傍ら、夜学の大学に通って将来は弁護士になろうと志している黒人青年のマーク・サンガー、この三人が彼の捜査の協力者として毎回活躍します。 |

「霧に消えた歌声」
(1967年)
(グロービジョン出版) |

「影がささやくとき」
(1970年)
(グロービジョン出版) |
このように物語は主人公であるアイアンサイドを中心に3人の部下たちの協力とチームワークによって捜査が進んで行きはするのですが、単なるアクションが中心の警察ものではありません。
中心となるのはあくまでもアイアンサイドという強烈な個性を持つ探偵の魅力と彼の名推理、すなわち探偵ものの本格的な謎解きであり、ブラウン巡査部長とベルディング巡査が彼の足となって聞き込みを担当して証拠をかき集め、それを元にアイアンサイドは安楽椅子探偵さながらに推理を展開していきます。
緻密に張り巡らされた伏線と断片的に与えられる手がかりをもとに事件を推理し、狡猾な犯人を追いつめていくストーリー仕立ては、パズルを解いていくのにも似た楽しさがあり、まさしく本格ミステリファンはうってつけのシリーズです。
そしてアイアンサイドが嘱託警部であること、即ち警察組織とは一線を画し、いわば私立探偵として自由に行動できる立場にあることも、ストーリーにより一層の幅と厚みを与えています。 |
アイアンサイド警部を演じたのは弁護士ぺリイ・メイスンを演じて一躍名を馳せたレイモンド・バー。その彼の名演技と、数多くの作家・脚本家たちが交替で担当したと言われる脚本の質の高さ、それに加えてクインシー・ジョーンズの作曲した華麗なテーマ曲にも乗って、7年間に渡り、日本全国で延べ20億人に親しまれたと言われています。
ちなみに鬼警部アイアンサイドのテーマは日本テレビ系列で放映されていた「ウィークエンダー」や、最近ではタランティーノ監督の映画「キル・ビル」などでも使用されているお馴染みの曲です。 |

「鬼警部アイアンサイド」
(ジム・トンプスン著)
(1967年)
(早川書房) |
|
■人物ファイル■
| 主演 |
ロバート・T・アイアンサイド警部
→レイモンド・バー(Raymond Burr) |
| 特技 |
学生時代はフットボールの選手 |
| 職業 |
元サンフランシスコ市警察の刑事部長
現在は市警長官直属の嘱託警部という役職で事件捜査に協力 |
| 協力者 |
腹心の部下でベテラン刑事のエド・ブラウン巡査部長(Sgt. Ed Brown)
→ドン・ギャロウェイ(Don Galloway)
婦人警官フラン・ベルディング巡査(Fran Belding)
→エリザベス・バウアー(Elizabeth Baur)
(途中までイブ・ホイットフィールド巡査→バーバラ・アンダーソン)
黒人青年のマーク・サンガー(Mark Sanger)
→ドン・ミッチェル(Don Mitchell) |
| 事件簿 |
| 1967 |
〈ワールドプレミア〉にて鬼警部アイアンサイドのパイロット版ムービー「Ironside」が放映される |
| 1967 |
パイロット版の好評を受けてシリーズがスタートし、1975年までの間に全194話(パイロット版含む)が放映される |
| 1993 |
スペシャル版「帰って来た鬼警部アイアンサイド (The Return of Ironside)」で一度だけ復活 |
|
■関連リンク■
■事件ファイル■
【ノヴェライズ版】
| No. |
事件名 |
発表年 |
邦訳 |
備考 |
| 1 |
鬼警部アイアンサイド |
1967 |
HPB1770 |
ジム・トンプスン著 |
| 2 |
Ironside: The Picture Frame Frame-Up |
1969 |
- |
ウィリアム・ジョンストン著 |
【日本で独自に編纂されたTVドラマのノヴェライズ版】
TVシリーズの全事件リストについては
上記関連リンクにあるWEBサイト「The Ironside Archive」をご覧下さい
| No. |
事件名 |
発表年 |
邦訳 |
備考 |
| 1 |
交錯の銃弾 |
1967 |
グロービジョン社 鬼警部アイアンサイド1('75) |
#7(1-5)
I・G・ネイマン&W・ミラー著 |
| 2 |
霧に消えた歌声 |
グロービジョン社 鬼警部アイアンサイド2('75) |
#12(1-11)
S・キャンデル著 |
| 3 |
影がささやくとき |
1970 |
グロービジョン社 鬼警部アイアンサイド3('75) |
#86-87(4-7・4-8)
S・スターン著 |
| 4 |
血の罠 |
1971 |
グロービジョン社 鬼警部アイアンサイド5('75) |
#118(5-12)
D・ムラレイ著 |
| 5 |
殺人予告フィルム |
1972 |
グロービジョン社 鬼警部アイアンサイド4('75) |
#134(6-5)
M・バトラー&C・トランボ著 |
ミステリー・推理小説データ・ベース Aga-SearchTOPへ 