出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
962 |
女は泣いていた。ベッドの上にうつ伏せになり、髪をふり乱したまま、横たわっていた。腰のまわりにまずかにひっついているピンクの布切れと、ほつれた片方のストッキングだけの裸同然の姿で。下着の切れはしが残骸のように床にちらばっている。……マット・ヘルムをみるなり、女はののしり声を浴びせた。顔をあげたひょうしに、からだのみにくい傷痕、目の縁の黒いアザ、切れた唇がありありとマットの目に映った。女は泣きじゃくり、ののしりながらいった─カール・クロッホと名のるゴリラのような大男が、彼女を部屋じゅう引きずりまわし、ベッドの上に突きとばし、着物をひき裂いて乱暴したのだと……すべてマットの責任かもしれなかった。ソ連諜報機関のボスがナチ党員あがりの殺し屋を従えてアメリカに侵入したという情報をキャッチしたM機関は、マットにアメリカ屈指の女科学者の護衛を命じていた。かくて、ニュー・オーリンズの夜、はやくも敵の尾行に感づいたマットは、とっさに目にはいった行きずりの女を拾い、いっしょに飲み歩いて、女科学者のカムフラージュに使ったのだった……非情なスパイとして、ソ連のスパイを迎え撃つマットの凄絶な戦い! 待望久し、部隊シリーズ第7弾! |