カブト虫殺人事件 タイトル

カブト虫殺人事件

原題

The Scarab Murder Case

発表年

1930

著者/訳者/解説

ヴァン・ダイン/井上勇/中島河太郎

カバーデザイン

イラスト 桶本康文/デザイン 小倉敏夫

ページ数

401
作品レビュー

あらすじ(解説文)

出版

東京創元社
創元推理文庫103-5
エジプト博物館内で殺されていた死体は、下手人を指摘するあらゆる証拠をそなえていた! あまりにも犯人を指し示す証拠が揃い過ぎている。 ファイロ・ヴァンスの苦悩はそこから始まった。 法律的には正義の鉄槌をくだしえない犯人に対して、エジプトの復讐の神はいかなる神罰を用意していたのか? 完全であることを唯一の弱点とする完全犯罪を描いたヴァン・ダインの第五長編。

初版

1960年

重版

1992年35版(640円)

入手

セブンアンドワイicon amazon

ISBN

4-488-10305-7

【感想】★★★★

 「グリーン家」、「僧正」と来てこのカブト虫もヴァン・ダイン作品の中ではかなり評価の高い作品ですが、期待に違わず楽しめました。ただ結末が以前某海外本格作家のとある作品を読んでいたので予想できてしまったのが残念ではあります。
 中盤でヴァンスが見せる推理も鮮やかでしたが、それが実は伏線となって意外な結末を迎えます。とても心地よくてまさに本格ミステリの醍醐味を存分に味わえると思います。

 ただマイナス要素もいくつかありました。ヴァンス=ヴァン・ダインといえばやたらと骨董・古美術などの薀蓄が語られることが多いのが全作品に渡っての特徴ですが、この作品は博物館を事件現場とし、死体の傍に落ちていたカブト虫のスカーフ・ピン他無数の古美術品に囲まれて事件が展開することもあってかこういった骨董・古美術についての薀蓄が語られるシーンが他の作品に比べて多いかなと私には思えました。他の方でも少しうんざりしたという感想を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。
 それから解決方法もあれでは…という感じですね。心理探偵ならではとも言えますが、少し無責任とも思えました。

(以下ネタバレあり)
 今回のこの作品のポイントは言うまでもなく一度嫌疑をかけられて逮捕されて公判に課せられ、そこまで来て初めて自分が無罪であるという証拠を提出し、一度無罪判決を受けた者は二度と裁判にはかけられないという法律制度を利用するという点にあります。
 念には念をと思ってしたことが却って余計なことで、そこからヴァンスに疑惑を持たれてしまった訳ですが、このトリックは上記にあるとおりこの作品以前に発表されたある海外黄金時代の作品でありましたので、何となくピンと来てしまいました。
 それでもプロット全体がよく練られていたので充分楽しめたと思います。前半の6作品はヴァン・ダインも自信を持って世に送り出せたことでしょう。本当にいい作品ばかりだと思います。