出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
891 |
ウッドが探偵小説家のアミアス・リーと同一人物だということが分かってからは、ピン統制局につとめている人たちが泊まっている《ファンリー宿舎クラブ》は、にわかに活気を呈してきた。娯楽にとぼしい戦時下のことであり、片田舎のマーセット・ベイにある統制局には遠くから赴任してきた者がおおく、てっとりばやい刺激が必要だったのだ。…… ウッドの正体を知るや否や、宿舎クラブの面々は、早速、ウッドに探偵小説のネタを提供するという名目で、役所を殺人現場と見立て、筋書つくりに熱中しだした。善良だが、少し頭の足りない初老の婦人ミス・ダンビルを犯人と決め、被害者は厳格なことで聞こえる統制局長官のパラフォックスとし、兇器の千枚通しまで着々と決まっていった……。 が、法律顧問をしているぺティグルーや、秘書のミス・ブラウン、それに犯人の役を割り当てられたミス・ダンビルたちは、そういう気狂いじみた遊びには無関心だった。熱中するにはあまりにも大人気ない遊びだった。が彼らにもとうてい無関心ではいられない時ばやってきた─こともあろうに、ミス・ダンビルが現実に殺されてしまったのだ! しかも、筋書遊びで兇器と指定されていた千枚通しのただのひと突きのもとに……! 滋味あふれるユーモアをこめて描く本格ミステリの秀作 |