殺人者登場 タイトル

殺人者登場

原題

Enter a Murderer

発表年

1935

著者/訳者/解説

N・マーシュ/大久保康雄/大久保康雄

カバーデザイン

なし

ページ数

335
作品レビュー

あらすじ(解説文・管理人著)

出版

新潮社
新潮文庫 赤117
 旧友の俳優フェリックス・ガードナーから招待を受け、ユニコーン座で上演中の探偵劇「鼠と海狸」を観劇していた新聞記者のナイゼルとアレイン警部。迫真の演技が繰り広げられるなか舞台は終幕へと向かい、ガードナーとそのライヴァルの俳優アーサー・サーボネイジアが言い争うシーンへ。そして拳銃でアーサーを脅しつけるシーンを演じていたガードナーは台本どおり拳銃を発射するが…。弾が込められていないはずの拳銃には実弾が装填されており、発射された銃弾はアーサーの命を奪ったのだった。 一体誰がいつどこで拳銃をすり替えたのか? 様々な殺害動機を持つ舞台関係者の中からアレイン警部が指名した犯人は意外にも…。
 「マーシュ女史の作品はどの一場面を取り出しても脚色する必要もなくすぐにそのまま舞台で上演し、映画化することができる」というアメリカの評論家ハワード・ヘイクラフトの言葉を裏書するかのように、演劇畑で生涯活躍したマーシュ女史ならではの機智に富んだ会話でスピーディーに展開されていく本格推理長編第二弾。

初版

1959年(110円)

重版

入手

amazon

ISBN

なし

【感想】★★★

 マーシュ女史の長編第2作目で、日本では現在極めて入手が困難な作品の一つです。私もかなりの出費をしてこの作品を入手しました。そして読んだ感想はと聞かれれば、あまりに高額だったため値段に見合うとまではさすがに言い切れませんが、かなり切れ味鋭い本格推理が楽しめる傑作だと答えさせて頂きたいと思います。

 様々な事件関係者が様々な殺害動機を持つ中で推理するのはかなり困難を伴いますが、巧妙にいくつも伏線が張られていて、結末ではあまりの見事さに思わず唸ってしまいました。犯人当てというよりは、この伏線をきちんと当てるのがこの作品の最大の焦点だと思います。是非自信のある方は挑戦して頂きたいですね。私は見事してやられましたが(苦笑)

 物語は劇場での探偵劇の上演中に殺人が起こり、それ以後もこの劇場と劇団関係者を軸に事件が推移していきます。マーシュ女史はミステリ作家としてだけでなく、生涯演劇の仕事でも活躍していただけに、こういった劇場の情景描写や俳優・女優を描かせればどんな推理作家よりも優れているでしょうから、女史にとってはまさにうってつけのテーマといえるでしょう。
 本作も人物が魅力的に描かれ、物語も幻想的な事件発生に始まってスピーディーに展開が二転三転し、最後には劇的なクライマックスを迎えるなど、非常に読みごたえのある内容に仕上がっています。訳に関しても相当前のもののはずですが、古めかしい印象はなく非常に読み易かったと思います。

 不満な点は実はほとんどないのですが、強いて言うなら劇的なクライマックスの割には驚きが少なかったことでしょうか。これは似たような話というものをいくつも以前読んでいたからかもしれません。ただそれでも思わず息を飲むラストであることは間違いありません。物語・結末に感動したというよりは上手いプロット・伏線の張り方に感心したという印象の方が強いですね。

 非常に入手が困難な本作品ではありますが、本格ファンならぜひ一度は読んでおきたいオーソドックスで危な気のない本格ミステリだと思います。