出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
398 |
召使のマック・ウィリアムは、空の明るい間は仕事を続ける人間の例に漏れず、早起きだった。 その朝も、山々の頂から夜明けの灰色の光が覗きかかった頃には、もう細君や子供を家に残し、いつものように、ブレアフィニイの方角へと歩いていた。 だが……この毎朝の習慣は、この朝に限って破られることになった。 というのは他でもない─彼は百ヤードも行かないうちに、、コリン・リーヴァが、冷たい硬ばった身体をして、そこの道端に横たわっていたのである。 だが、知らせを聞いて駆けつけた人々は狐につままれたような顔を見合わせた。 屍体がない。 まるで空気中に蒸発でもしてしまったように、今あった屍体がないのである。 だがしかし─これは、不可思議な事件の発端に過ぎなかったのだ。 屍体はその後、現われては消え、消えてはまた現われて、事件に関係した人々を五里夢中のうちに迷わせることになったのだ……。
本書はイギリス探偵小説界の重鎮ロナルド・ノックスが、その高い教養とユーモアと風刺の才能を十二分に発揮した代表作として、長く翻訳を待たれていたハイブロウな傑作である。 |