出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
875 |
パッグ・バンタの強烈な鉄拳が私立探偵カール・クレーヴェンの横っつらに飛んだ。続いて頬骨の上に第2発。さらに続けざま、ライト、レフとと、鋭いパンチがカールの顔面に炸裂した。カールは壁に背中をぶっつけ、床にうつぶした。唇が切れ、鼻血がドクドクと流れ出した!……が、ここではむかっちゃいかん、とカールは自分に言い聞かせた。ギャングのボスなどにかかずらっていては、仕事がすべて台無しになってしまうのだ……。 そもそもパッグの情婦とも知らずに、ジンジャーという赤毛の女に手を出したのが、間違いのもとだった。シカゴからポールトンの町にはるばるやってきたのは、何もそんな女といちゃつくためではなかった。……このポールトンには、名にし負う新興宗教の団体があり、ソロモンの葡萄園と呼ばれる丘陵に千名近くの信者がこもって共同生活をしているのだが、そこにいるピネロープという女を探し出すというのが今度の仕事の目的だった。が、そこは、宗教団体という名のもとに、悪事の限りを尽くしているという噂が高いのだ。そこに乗りこもうとする今、ギャングとの争いなんかに巻き込まれる場合ではなかった─が、そのとるに足らぬはずのけんかが、やがてくる途方もない騒乱の先触れになろうとは! |