ヘレン・ウェルズ＆ジュリー・タサム
（Helen Wells and Julie Campbell Tatham）

　アメリカの少女たちに大人気の看護婦探偵チェリー・エイメスとスチュワーデスのヴィクトリア・バー（ヴィッキー・バー）を主人公としたジュヴナイルミステリで有名な女流児童ミステリー作家。
　どちらのシリーズも元々の原作者はヘレン・ウェルズで、数作発表の後にテレビやラジオの脚本のためシリーズを中断していた間の数作品のみジュリー・タサムが担当しています。

　ヘレン・ウェルズはアメリカの女流作家で、イリノイ州に生まれ７歳の時にニューヨークに移住。10代の頃は絵画と音楽に熱中し、その後ニューヨーク大学で哲学と社会学と心理学を学び、学内の季刊誌の初代女性編集長も務めたといいます。
　大学を卒業後はソーシャルワーカーとして働く傍ら小説を書き始め、雑誌の短編コンテストに２度入選したのをきっかけとしてフルタイムの作家となります。

　作家としては少女向けのジュヴナイル・ミステリのシリーズで有名となり、看護婦チェリー・エイムズとスチュアーデス探偵のヴィッキー・バーの活躍する２つのシリーズでよく知られ、中でもチェリー・エイムズのシリーズはアメリカだけでなく、イギリスなどのヨーロッパ各国語に翻訳されて大変な人気を集めたといいます。

　ウェルズの作品は全編に流れるユーモアと機知、思いがけない事件の展開などで読者を楽しませ、また舞台となった土地の生活や伝説などもふんだんに取り入れ、読んだ後に自分もそこで過ごしたような気分にさせてくれるのが特色で、ミステリとしては最後の最後まで謎が解けず、最後にどんでん返しを浴びせる型の作風というよりは、一歩一歩着実に推理を推し進めていく型のもので、読者は主人公とともに考える面白さを味わえるというのが大きな特徴です。

　一方ジュリー・タサムはアメリカの女流作家で、ニューヨークに生まれ高校を卒業後〈ニューヨーク・イヴニング・ポスト〉紙の編集者や、秘書、ホテル経営などを経て、フルタイムの作家となり、ウェルズの２つのシリーズのピンチヒッターの他に、自身の創造した少女探偵トリクシー・ベルデンの活躍する少女向けのジュヴナイル・ミステリのシリーズを1948年から発表しています。

　このトリクシー・ベルデンのシリーズは人気を集め、彼女自身が作品から離れた後も、Kathryn Kennyのハウスネームの下で数多くの作品が書き続けられました。