歴史本格の大家

ポール・ドハティー
(Paul Doherty)

「教会の悪魔」
（1986年）
（早川書房）

　イギリスの推理小説家で、ポール・ドハティとも表記。修道士カドフェル・シリーズのエリス・ピーターズ、密偵ファルコ・シリーズのリンゼイ・デイヴィスと並ぶ歴史ミステリ御三家の一人です。
　数多くのペンネームを用いて既に50冊を超える作品を発表し、かつアレクサンダー大王やエジプト女王など時代背景の全く異なるシリーズを精力的に発表する多作家として知られています。

　若い頃から歴史に興味を持ち、大学に進むと歴史学を専攻し、歴史学の博士号を取得。卒業後は歴史教師を経て現在はロンドン北東部の高校で校長職に就いています。

　作家活動は専ら教職の傍ら行なわれ、自らの得意分野である歴史を題材にした歴史ミステリが中心ですが、現代ミステリのようにリアリティーに縛られることもなく、また歴史上の事実や人物を上手く取り込むことで、不可能犯罪や密室色の濃い本格作品を書くことに成功しています。

　彼の作品には数多くのシリーズがありますが、代表的なものとして下記のようなものがあります。

「毒杯の囀り」
（1991年）
（東京創元社）

　まずヒュー・コーベットはエドワード１世つきの事務官で密偵的役割を果たし、著者の最初の出世作となったシリーズですが、悪魔崇拝などのオカルト色の濃い作風に不可能犯罪の巨匠ディクスン・カーばりの不可能興味が特色の本格ミステリ・シリーズです。

　次に天文学と占星術を愛するドミニコ会修道士アセルスタンを主人公としたシリーズは、毎回検視官のサー・クランストンに請われ捜査の助手を務める形で物語が進められていきますが、こちらはもっともオーソドックスな本格ミステリ作品とされています。

　また絞首刑になる所を危うく逃れた半悪党的性格のロジャー・シャーロットと聡明な主人のベンジャミン・ドーンビーの活躍するシリーズは、16世紀を舞台にロジャーが過去の冒険を回想する体裁で物語が進められ、謎解きに冒険的要素も加味された好シリーズで、その第１作である「白薔薇と鎖」が我が国における長編紹介の第１号にもなりました。

■作家ファイル■

本名

ポール・チャールズ・ドハティー

出身地

イギリス、イングランド北東部北ヨークシャーのミドルズバラ生まれ

学歴

リバプール大学、オックスフォード大学で歴史を学び歴史学博士号を取得

生没

1946年～

作家としての経歴

1985

長編「The Death of a King」で作家デビュー

シリーズ探偵

密偵ヒュー・コーベット (Hugh Corbett)（13世紀・エドワード１世時代）
アセルスタン修道士 (Brother Athelstan)（14世紀後半）
ロジャー・シャーロット (The Journals of Sir Roger Shallot)（マイクル・クラインズ名義）（16世紀）
ニコラス・セガラ (Nicholas Segalla)（アン・ダクタス名義）
キャサリン・スウィンブルック (Kathryn Swinbrooke)（Ｃ・Ｌ・グレース名義）

代表作

「教会の悪魔」
「毒杯の囀り」「赤き死の訪れ」
「白薔薇と鎖」

■関連リンク■

１　ポール・ドハティー公式サイト

■著作リスト■

１　密偵ヒュー・コーベット登場作品リスト

２　アセルスタン修道士登場作品リスト

【長編】

【邦訳短編】

３　ロジャー・シャーロット登場作品リスト

すべてマイクル・クラインズ(Michael Clynes)名義

４　ニコラス・セガラ登場作品リスト

すべてアン・ダクタス(Ann Dukthas)名義

５　キャサリン・スウィンブルック登場作品リスト

すべてＣ・Ｌ・グレース(C. L.. Grace)名義

６　カンタベリ巡礼(Canterbury Tales)シリーズ

７　古代エジプト・ミステリ・シリーズ

８　アレクサンダー大王ミステリ・シリーズ

９　古代ローマ・ミステリ・シリーズ

10　Mathilde of Westminster

11　その他の作品

【長編】

【Vanessa Alexander名義の長編】

【アンナ・アポストロー (Anna Apostolou) 名義の長編】

【邦訳短編】

【ノンフィクション】

【参考】「白薔薇と鎖」（早川書房　ハヤカワポケットミステリ）

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