出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
606 |
フランク・ロスコオは、ジョン・メランビイの一家にとって文字どおり生命の恩人だった。海水浴の際中にあやうく溺れかかった妻のサリイと八つになる長男トニイとを、生命の危険を賭して救ってくれたのだった。しかもロスコウは、自己宣伝を極度にきらって、サリイの感謝を受け流し、そのまま立ち去ろうとした。あまりといえば無欲恬淡な男だった。その名前さえ、サリイのたび重なる懇願によってようやく明かしてくれたのだった。彼は二十年あまりイギリス陸軍に勤務して、ごく最近退役になったばかりのもと陸軍少佐と名乗った。この地方へは新生活を始めるべく、養鶏所でもやろうとやってきたのだ。古物研究家でこの地方の名士でもあるジョン・メランビイは、身よりも親戚もない孤独なロスコオを援助しようと懸命になった。そしてメランビイ夫妻の熱心な口説がようやく効を奏して、ロスコオは一家の客として訪ねてくることになった。
だが、その翌日、メランビイ夫妻はロスコオの正体を知った─礼儀正しく、勇気と自己犠牲の心豊かな紳士のはずだったロスコオは、一夜にして悪質きわまりない山師の本性を現わしはじめたのだった!
若い富裕な夫婦のうえに突然襲いかかった黒い影。あいつぐみごとなスリルと緊迫感に満ちた、ガーヴ一流のサスペンス・スリラー。 |