世界初の刑事探偵

FRA ルコック探偵
(Monsieur Lecoq)

ルルージュ事件
「ルルージュ事件」
(1866年)
(国書刊行会)

 フランスの小説家エミール・ガボリオの生み出した、世界初の刑事探偵。

 初登場時は25歳前後。ノルマンディ地方の由緒ある家柄に生まれ教育も受けますが、大学時代に両親を失い、自活するため職業を転々とします。

 そしてある職場の雇い主に「君は立派な才能を持っている。だが君のような貧乏人は、盗賊になるか敏腕な刑事になるかどちらかしかないが、選ぶのは君だ」と言われ、結局刑事の道を歩み始めたのです。

 その風貌はひげをきれいに剃った青白い顔に真っ赤な唇、黒くふさふさとした豊かな髪の毛に体つきは小柄なものの均整のとれた好青年です。

 そんな彼の推理方法というのは証拠をもとに仮説を立てて推理し、犯罪と被害者を有機的に結び付けてゆくというやり方で、エドガー・アラン・ポオの生み出したオーギュスト・デュパンのように想像力だけで事件を解決する捜査方法とは大いに異なります。まさに近代的捜査方法の先駆者といえるでしょう。

ルコック探偵
「ルコック探偵」
(1869年)
(旺文社)

 ルコックの登場する作品は5作品ありますが、最初の世界初の長編推理小説と目される「ルルージュ事件」では、彼の師匠である素人探偵タバレ先生が活躍し、ルコックは脇役あくまでわき役にすぎません。彼の活躍が味わえるのは2作目以降になります。

 またガボリオに多大な影響を受けたフランスの作家フォルチュネ・デュ・ボアゴベが、ルコック後記としてのパスティーシュを1作品発表しています。


■原作■

エミール・ガボリオ
(Etienne Èmile Gaboriau 仏 1832-73)


■人物ファイル■

職業
パリ警視庁刑事
特技
変装(この設定は後世の探偵たちの先駆けに)
協力者
ルコックの師匠素人探偵タバレ先生
事件簿
5長編に登場

■事件ファイル■

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 ルルージュ事件
(人か鬼か)
1866 国書刊行会('08)
岩谷選書('50)
苦楽探偵叢書('47)
春秋社('35)
探偵小説'31.12(1-4)
黒岩涙香翻案 銀花堂「人耶鬼耶」(明治21)
世界初の長編推理小説
2 書類百十三
(書類第百十三)
(書類百十三號)
(愛慾地獄)
1867 博文館 世界探偵小説全集3「ガボリオ集」('29)
博文館文庫59('39)
博文館 探偵傑作叢書43('26)
金剛社 世界伝奇叢書6('22)
黒岩涙香翻案 金桜堂「大盗賊」(明治22)
3 河畔の悲劇
(オルシヴァルの犯罪)
改造社 世界大衆文学全集26「ルコック探偵 河畔の悲劇」('29)
丸亭素人翻案「殺害事件」(明治23)
4 Les Esclaves de Paris
(英 The Slaves of Paris)
(パリの奴隷
 /シャンドース家の秘密)
1868 -
5 ルコック探偵
(名探偵)
1869 旺文社文庫(抄訳)('79)
東都書房 世界推理小説大系2('64)
博文館 名作探偵7('39)
改造社 世界大衆文学全集26「ルコック探偵 河畔の悲劇」('29)
博文館 探偵傑作叢書17('23)
新青年'22.5(抄訳)
丸亭素人翻案「大疑獄」(明治25)

【パロディ・パスティーシュ】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 死美人
(ルコック氏の晩年)
1878 旺文社文庫('80)
宝出版 涙香全集19・20('79)
小山書店 日本探偵小説代表作集1('61)
黒岩涙香翻案「死美人」(明治25)
フォルチュネ・デュ・ボアゴベ著

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