出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
191 |
エリザベス・デイリイは1940年処女作”予期せぬ夜”をもって登場したアメリカの新進女流作家である。それ以後、デイリイは一年に平均二冊の割合で作品を発表しているのだが、その度に批評家や読者の好評を博し、現在では第一級の探偵作家になっている。彼女の作品の大部分はニューヨークを背景としており、動きに無駄がなく、しかも未解決な曖昧さを残さず、一分の隙もないように組み立てられている点が読者に喜ばれているようである。 本書『二巻の殺人』はデイリイの第三作に当り、百年前に失踪した少女が再びそれらしい姿を表すという発端は、類型がいくつかあって必ずしも新奇ではないが、これにバイロン全集をからませて、古書狂のヘンリー・ガーマジを探偵として引っぱり出す処が面白い。登場人物の性格の組合せに神経を使って、環境と性格から犯人が生まれてくるという書き方はどうやらクリスティー女史の手法に似ている。しかしヒューマニスティックな見方をしているため、どの人物も憎めない一面を持っているのと、明快な解決ぶりで、後味がサッパリして快い。もっと他の作品も読んでみたいと思わせる作品であり、作者である。 |