出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
1257 |
警察部長ピンカム氏は、まことに面白くなかった。没落しているとはいえ、未だに”閣下”と呼ばれ、この地方に隠然たる勢力を持ち続けているクラウチ卿の言葉に、喉もとまでこみ上げていた抗議のセリフを引込めてしまったのだ。 ”ロンドン警視庁を呼びたまえ……”たかが、一人の平凡な若者が撲殺された事件の捜査ぐらい、地元の警察で充分なのに。卿の魂胆は見え透いている。物見高い観光客に開放して入場料を取っている、先祖伝来の豪壮な屋敷、ベルツア邸の派手な、しかも無料の宣伝に使いたいのだ。嫌々ロンドンに連絡を取ったピンカム氏にはもう一つ不幸が重なった。こともあろうに、ロンドンから派遣されてきたのは、史上最悪の探偵ドーヴァー主任警部だった……! 殺された若者はゲーリー・マーシ。ベルツア邸の会計係ミス・マーシが、妹の子と称して連れて来た男で、クラウチ卿の執事ティフィンの娘と婚約を交したばかりだったが、ミス・マーシの実の子ではないかという噂が流れていた。クラシックな殺人劇の舞台は、すべて揃っている田舎の豪邸、誇り高き貴族とその執事、そして撲り殺された男。しかし、マグレガー部長刑事を引き連れて、ドーヴァーが乗り込んできたとき、静かな村は上を下への大騒ぎがはじまった……。
好調の、傑作ユーモア本格シリーズ第七弾! |