ドーヴァー1 タイトル

ドーヴァー1

原題

Dover One

発表年

1964

著者/訳者/解説

ジョイス・ポーター/川口正吉/N

カバーデザイン

勝呂忠

ページ数

252(巻末「待望の本格物─風変りなドーヴァー警部シリーズ」およびポーターの略歴、1967年までの著作リスト)
作品レビュー

あらすじ(解説文)

出版

早川書房
ハヤカワポケットミステリ
967
ジュリエット・ラッグ─まるまると太って、この世の患いごととはなんの関係もないような女が、とつぜん失踪した。ある朝姿を消してから、消息を断ってしまった。はじめ、若気のあやまちで駆け落ちしたとにらんでいたクリードン警察当局も、100キロ余もあるデブの女性が、そんなことをするはずはないと考え、ひょっとしたら誘拐されたのではないかと判断した。
そこで、はるばるやってきたのが、鬼警部と怖れられるロンドン警視庁主任警部ウィルフレッド・ドーヴァーと、その手足として働くマグレガー部長刑事だった。
ドーヴァーは巨漢だった。6フィート2インチの体格、110キロという脂肪の多い肉を出来あいの古びた服にくるみ、二重顎と猪首をその上にのっけていた。縮尺のちがったちんまりとした鼻、口、眼が、ばかでかい面積の顔のなかで消え入りそうだった。
かくて、ロンドン警視庁一の気むずかし屋のドーヴァー警部は、部下を徹底的にいじめながら、失敗を重ねつつ手がかりのなにもない捜査に乗り出していった!
探偵小説界に新たなキャラクター登場! 探偵小説の面白さを満喫させる、ロンドン警視庁の名物警部ドーヴァー・シリーズ第一作!

初版

1967年(330円)

重版

入手

amazon

ISBN

4-15-000967-8

【感想】★★★★

 部屋の真ん中に境界線を引いて、ここからこちらが私の部屋、そこから向こうがあなたの部屋…と兄弟がいらっしゃる方はこんなことを兄弟の間でした経験があるかもしれません。

 このジョイス・ポーター女史のデビュー作にしてドーヴァー初登場作は、大の大人になってもこんな子供っぽいことを未だにしている年老いた兄妹をはじめ、オカマと間違えられそうになること数回、ドーヴァーすらもタジタジの女傑刑事、あるいは喫茶店を皮切りに二回に渡って事件のとばっちりを受けてしまうウィリアムズ令夫人など、とにかく個性あふれる登場人物ばかりが登場してきます。

 ドーヴァーも相当変わり者で、自分勝手で傲慢な所のある人間ですが、このドーヴァーすら普通に見えてしまうくらい、他の登場人物が変てこでひと癖もふた癖もある人間ばかりでした。

 ドーヴァー主任警部についてはいろいろなミステリ関係の書物の紹介文を読んでいるととにかく傲慢で無能で無責任ということばかり強調されておりかなり抵抗を感じるような探偵に思えたのですが、むしろドーヴァーは捜査はかなりきちんとやっていますし、また推理も論理立ててしている印象が強く、決してただの無能な警察官ではないような気がしました。ただ確かに運は強いです。
 
 とにかく最初から最後まで笑い所の連続で、読んでいて全く飽きがきませんでしたし、肝心の本格要素も上手い具合に伏線が引いてあり、最後であっと言わせてくれます。
 そしてただユーモアがあるだけのミステリではなく、プロットがしっかりとしているため読んでいて何か一本芯の通っている、きっちりとしたユーモア本格ミステリだと思います。

 ユーモア要素と本格要素がこれだけ上手くマッチした作品も非常に珍しいと思いますが、ポーター女史の作品はそれを見事に成し遂げています。非常にお気に入りの作家になりそうな予感がします。

 文句のつけようのない作品だと思いますが、ポーター女史のユーモア感覚というのはまさしくブラック・ジョークの連発なため、読む人間を選ぶであろうことは私も否定しません。 個人的にはかなり気に入りましたし、是非幅広くミステリ・ファンにも読んで頂きたいシリーズだと思います。 ツボにはまればとにかく楽しい時間を過ごせると間違いなしです。