出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
1476 |
夜半近くにオランダのフークを出航したヴァイキング・プリンセス号の船上では、ちょっとした騒ぎがもちあがっていた。いつもなら予約なしでも楽にキャビンを確保できるのに、今夜ばかりは団体客のせいで全部ふさがっていたのだ。あてがはずれた客たちは口々に苦情を申し立てた。むずかる娘を連れた若い母親、金持ちらしい美男美女のカップル、それにヘンリとエミーのティベット主任警視夫妻……なかでも一人旅の小柄な男は執拗だった。船員に訴える態度は半狂乱に近かった。まるでキャビンを取れる取れないが生死にかかわるみたい─エミーは思った。だが、まさにその通りだった。翌朝フェリーがイギリスに到着したとき、寝台席でくだんの小男の刺殺死体が発見されたのだ! 死んだ男はスミスと名乗る小悪党で、前日アムステルダムの宝石店から盗まれたダイアモンドの運び屋であると目されていた。船も乗客たちも厳重な捜索を受けたが、ダイヤは見つからなかった。ロンドンに戻ったヘンリにほどなく地元警察から事件の捜査協力の依頼が届いた。が、その頃からなぜかヘンリとエミーの周辺には、怪しげな事件が頻発しはじめた!
ますます円熟味を増す筆で、英国ミステリの伝統の上に独自の世界を築きあげる作者が、『死のクロスワード』に続いて自信を持って送り出す秀作本格推理。 |