映画化された「ローラ殺人事件」で人気作家に

USA ヴェラ・キャスパリ
(Vera Caspary)

ローラ殺人事件
「ローラ殺人事件」
(1943年)
(早川書房)

 アメリカの女流ミステリー作家で、元々は映画脚本家として活躍していました。

 シカゴの商店の仕入れ係をしていたポルトガル系ユダヤ人の家庭に生まれますが父親が高齢だったため学費を頼ることができず進学を諦め、最初はセールス・ウーマンとして化粧品やタイプライター、洗濯機などの売り込みをして生計を立てていました。

 その後24歳の時にニューヨークに移って著述の勉強のため広告業界に入って通信講座の編集などに携わり、更にはハリウッドのナイトクラブで占い師をしていたといいます。そしてそのときに学んだ心理学の知識が後々の著作活動に非常に役立ったそうです。

 著作活動の方はまず1930年前後に普通小説を数冊発表していますが、これらの評価はあまり芳しくなく、その後映画界に転じてようやく芽が出始め、「六月十三日の夜」などの探偵映画のシナリオを書いていました。

 そして再び小説の世界に転じて1942年、ミステリの処女長編となった「ローラ殺人事件」を発表して人生の転機を迎えます。

エヴィー
「エヴィー」
(1960年)
(論創社)

 この作品はそのプロットの妙と心理描写の巧みさでたちまち大評判となり、1944年には二十世紀フォックス社、オットー・プレミンガー監督で映画化もされ、こちらも評論家の間で絶賛されたといいます。

 続けて翌1945年に発表した「べデリア」も大好評で、米国内では200万部を売上げ、英国でも初版が2週間で売り切れるほどの人気だったそうです。


■作家ファイル■

出身地
アメリカ、シカゴ
生没
1904年11月13日~1987年6月13日
作家としての経歴
1943
ミステリーの処女長編「ローラ殺人事件」を発表
1944
「ローラ殺人事件」がオットー・プレミンガー監督で映画化され好評を得る
1945
第2長編「べデリア」を発表、こちらもイギリスで映画化される
シリーズ探偵
なし
代表作
「ローラ殺人事件」
「べデリア」「エヴィー」

■著作リスト■

1 ミステリ著作リスト

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 ローラ殺人事件 1943 HPB155 映画化('44)
2 Bedelia
(べデリア)
1945 - 映画化
3 The Murder in the Stork Club
(THe Lady in the Mink)
1946 -
4 Stranger Than Truth
(奇妙な真実)
-
5 The Weeping and the Laughter
(The Death Wish)
1950 -
6 Thelma 1952 -
7 False Face 1954 -
8 The Husband 1957 -
9 エヴィー 1960 論創社 論創海外ミステリ47('06)
10 A Chosen Sparrow 1964 -
11 愛と疑惑の間に 1966 小学館文庫 ミステリー・クラシック・シリーズ('00)
12 The Rosecrest Cell 1967 -
13 Final Portrait 1971 -
14 Ruth 1972 -
15 Elizabeth X.
(The Secret of Elizabeth)
1978 -

【短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Sugar and Spice 1948 -

2 普通小説

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The White Girl 1929 -
2 Ladies and Gents -
3 Music in the Street 1930 -
4 Thicker Than Water 1932 -
5 The Dreamers 1975 -

3 戯曲

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Bilnd Mice 1930 -
2 Geraniums in My Window 1934 -
3 Laura 1945 - 「ローラ殺人事件」のジョージ・スクラーとの共同脚色
4 Wedding in Paris 1954 - H・メイ作曲
S・ミラー作詞

4 映画脚本

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 I'll Love You Always 1935 -
2 Easy Living 1937 - プレストン・スタージェスとの共作
3 Scandal Street 1938 - B・ミルハウザー、E・ウェルチとの共作
4 Service Deluxe - 共作
5 Sing, Dance, Plenty Hot 1940 - 共作
6 Lady from Louisiana 1941 - 共作
7 Lady Bodyguard 1942 - E・L・ハートマン、A・アーサーと共作
8 Claudia and David 1946 - R・フランケン、W・B・メロニーと共作
9 Bedelia - 共同脚色
10 Out of the Blue 1947 - W・ブロック、E・エリスクと共作
11 A Leter to Three Wives
(三人の妻への手紙)
1949 - J・L・マンキーヴィッツと共作
12 Three Husbands 1950 - E・エリスクと共作
13 I Can Get It for You Wholesale 1951 - A・ポロンスキーと共作
14 The Blue Gardenia 1953 - C・ホフマンと共作
15 Give a Girl a Break 1954 - A・ハケット、F・グッドリッチと共作
16 Les Girls 1957 - J・パトリックと共作
17 Bachelor in Paradise 1961 - V・デイヴィウス、H・カンターと共作

5 自伝

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Secrets of Grown-Ups 1979 -

【参考】「愛と疑惑の間に」(小学館 小学館文庫)
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