UK エセル・リナ・ホワイト
(Ethel Lina White)

バルカン超特急 消えた女icon
「バルカン超特急 消えた女」
(1936年)
(小学館)

 イギリスの女性推理小説家で、1930年~40年代にかけてサスペンス色の濃いミステリ作品を多数発表し、「らせん階段」や「バルカン超特急」の2作品が映画化されて大人気を呼び、流行作家として当時よく名前の知られた作家でした。

 コナン・ドイルの生み出した名探偵シャーロック・ホームズの短編「プライオリ・スクール」の舞台としても有名なイギリスのウェールズ地方東部、イングランドに隣接するモンマスシャーのアベガヴェニーという小さな村で生まれ、小さい頃からエッセイや詩を書き、やがて短編小説も手がけるようになっていったといいます。

 第一次世界大戦の後はロンドンへ移住し、年金恩給省での勤務を経て作家活動を開始。1931年に最初の長編「Put Out the Light (Sinister Light)」を発表したのを皮切りに、以後1944年に没するまでに全部で14の長編を残しています。

 彼女の代表作は3度のリメイクがなされるなど何度も映像化されている「らせん階段」と、サスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督による映像化で知られる「バルカン超特急」の2作品です。

らせん階段
「らせん階段」
(1933年)
(早川書房)

 中でも「バルカン超特急」の方はヒッチコック監督のイギリス時代の発表作品の中で最高傑作に位置づけられている名作の一つです。

 その他にハードボイルドの代表的作家として日本でもよく知られているレイモンド・チャンドラーが「The Unseen」のタイトルで脚色した「Midnight House」という作品があり、現在ではその3作品の著者として欧米では記憶されているようです。

 日本ではヒッチコック監督の映画「バルカン超特急」の公開はありましたが、原作の邦訳はずっとなされておらず、いわば幻の名作となっていました。

 しかし「バルカン超特急」が近年劇化されたこともあってか、2003年になって代表作である「バルカン超特急」と「らせん階段」がともに邦訳され、小説の方でも読めるようになったのは喜ばしいことです。


■作家ファイル■

出身地
イギリス、ウェールズ東部モンマスシャーにあるアベガヴェニー
生没
1876年~1944年
作家としての経歴
1931
最初の長編「Put Out the Light (Sinister Light)」を発表
1938
長編「バルカン超特急」がサスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督により映画化される
1945
長編「らせん階段」がロバート・シオドマク監督、ドロシー・マクガイア主演で映画化され、160万ドル以上の興行収入をあげる大ヒットとなる(同作品はその後TVや映画などで3度リメイクされている)
シリーズ探偵
なし
代表作
「らせん階段」「バルカン超特急」
「Midnight House (The Unseen)」

■著作リスト■

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Put Out the Light
(Sinister Light)
1931 -
2 Fear Stalks the Village 1932 -
3 らせん階段 1933 HPB1739 ロバート・シオドマク監督で映画化('45)
4 The First Time He Died 1935 -
5 Wax -
6 バルカン超特急 消えた女 1936 小学館 クラシック・クライム・コレクション('03) アルフレッド・ヒッチコック監督で映画化('38)
7 The Elephant Never Forgets 1937 -
8 The Third Eye -
9 Step in the Dark 1938 -
10 While She Sleeps 1940 -
11 She Faded Into Air 1941 -
12 Midnight House
(米 Her Heart in Her Throat)
(The Unseen)
1942 - レイモンド・チャンドラー脚色で映画化('45)
13 The Man Who Loved Lions
(米 The Man Who Was Not There)
1943 -
14 They See in Darkness 1944 -

【邦訳短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Gilded Pupil
教え子は大金持ち
HMM'94.3

【参考】「らせん階段」(早川書房 ハヤカワポケットミステリ)
「バルカン超特急」(小学館)
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