出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
157 |
エリック・アンブラーは文字映画、ラジオ、テレビの四つの物語形式を完全にマスターした驚くべき多才の作家である。活字では『恐怖の背景』『デミトリオスの棺』(いずれもポケット・ミステリ既刊)等の他に、1953年7月発売された本書『シルマー家の遺産』を執筆し、ラジオ台本も幾つか書いている。映画関係ではモーム、ベネットなどの著名作を脚色した他に彼自身の作として
The Way Ahead. The October Man などの映画台本を執筆している。
アンブラーは種々の職業を転々とし、その間に数篇の長篇を書いたのだが、彼の才能が頂点に達したのは戦争後のことである。本書を含む彼の戦後の作品二篇は、以前より一層文学的になり、グレアム・グリーンの作風に近づいて来ていると云えよう。本書『シルマー家の遺産』は頭のよい、若い弁護士が行方の知れぬ遺産相続人を探す話だが、その調査はナポレオン戦争の末期に遡り、それから現代までの地中海沿岸地方に於ける苦心惨憺たる事実の調査の経緯が克明に描かれている。 |