Yの悲劇 タイトル

Yの悲劇

原題

The Tragedy of Y

発表年

1932

著者/訳者/解説

エラリー・クイーン/鮎川信夫/中島河太郎

カバーデザイン

辰巳四郎

ページ数

424
作品レビュー

あらすじ(解説文)

出版

東京創元社
創元推理文庫104-2
行方不明を伝えられた富豪ヨーク・ハッターの死体が、ニューヨークの湾口に掲がった。 死因は毒物死で、その後、病毒遺伝の一族のあいだに、目をおおう惨劇が繰り返される。 名探偵ドルリー・レーンの推理では、有り得ない人物が犯人なのだが……。 ロス名義で発表した四部作の中でも、周到な伏線と、明晰な解明の論理は読者を魅了し、海外ベストテンで常に上位を占める古典的名作。

初版

1959年

重版

1998年107版(580円)

入手

セブンアンドワイicon amazon

ISBN

4-488-10402-9

Yの悲劇 タイトル Yの悲劇

原題

The Tragedy of Y

発表年

1932

著者/訳者/解説

エラリイ・クイーン/宇野利泰/

カバーデザイン

ページ数

あらすじ(解説文)

出版

早川書房
ハヤカワミステリ文庫
2-42
富豪ヨーク・ハッターの死体がニューヨークの港にあがった。その後、狂気じみたハッターの邸で奇怪な惨劇が起こり始める。子供が毒物の入った飲み物で危うく命を落としそうになり、未亡人がマンドリンという奇妙な凶器で殺害されたのだ。名探偵ドルリー・レーンはその驚愕すべき完全犯罪の解明に挑むが……。犯罪の異常性、用意周到な伏線、明晰な論理性と本格ミステリに求められるすべてを備えた不朽の名作。新訳決定版

初版

1988年

重版

1994年5版(680円)

入手

セブンアンドワイicon amazon

ISBN

4-15-070142-3

【感想】★★★

 数多くの雑誌などのランキングや書評などでクイーンの代表作として挙げられ世に名高いこの作品ですが、私的には違和感の多い作品でした。残念ながら、推理・物語の内容・結末の全てにおいて、4部作の中でもっとも印象が悪く、好みには合いませんでした。前作「Xの悲劇」があまりにも良い出来だったので、その落差のせいもあるかもしれませんが…。

 この作品は社会への問題提起というテーマなのかもしれませんが、何かクイーンのほかの作品とは一風変わった内容です。本格ミステリとしては大いに優れた作品であることは決して否定はしませんが、読者によって好みが大いに分かれる作品でもあるような気がします。

 本来はネタバレなしの書評だけですが、どのあたりに私が違和感を覚えたか知りたい方は、このページの一番下をご覧になってください。(ただし、かなり批判的に論評していますのでそれを承知の上で読んで下さい。断りを入れた以上、読んで不快になられても責任は負いかねますので注意してください。)

(注意)
 以下には「Yの悲劇」のネタバレがありますので、未読の方はこれ以上下に行かないでください!

1 レーンが、視覚、聴覚を奪われ話すことも出来ないルイザが事件現場で触れた頬がすべすべだったことで、犯人の身長を特定したことについて
  まず、一番違和感があったのがこれです。 レーンは人間がこれから逃げようとしているときにつま先立ちで腰をかがめていくのは不自然だ。だから犯人はその時直立していたのだから、犯人の身長を特定できると言っていますが、本当にそう言い切れるでしょうか? 私は自分でやってみましたが、前かがみになればつま先立ちでも不自然ではありませんでした。 この推理を聞いて私は真っ先に時代劇に出てくる盗賊が思い浮かんだのですが、結構腰をかがめて走っているような気がするのですが…。逆にその姿勢だとつま先立ちじゃない方が不自然だったぐらいです。 むしろ直立してつま先立ちで逃げる方がよっぽど不自然だと思うのですが…。
  いずれにせよ、必ずしもそうだとは言い切れないということが言いたいのです。 これに加えてその後の床几を使用して薬品を取ろうとしたことと総合して犯人が背の低い人間だと推理するのなら構わなかったのですが…。私もあの時点で犯人が分かってしまいました。

2 レーンが果物が腐っていたことで、犯人がルイザを殺す意図がなかったと推理した点について
  レーンは味覚の非常に優れたルイザが食べるはずのない「腐った」果物に毒物が仕込まれていたことで、犯人がルイザを殺す意図はなかったと推理していますが、これも変です。 そもそも味覚が非常に優れているのなら、「腐っていない」果物に毒を入れてみたところで気づくのではないでしょうか? つまりそもそも毒殺という手段を用いている時点でルイザを殺す意図がないとしなければおかしいと思います。 となると最初の毒殺未遂事件もルイザを殺す意図がなかったことにならなければおかしいことになってしまい、何か変なことになりませんでしょうか?
 確か毒物が無味だったとはどこにも書いていなかったような気がしたのですが。 もしそうなら私の不注意ですが…。

3 犯人が二つの部屋をつなぐ煙突から出入りしていた点について
 これも13歳の子供が誰にも見つからずにどうやって汚れた衣類を始末したり、体をきれいにしたのか不思議です。

4 レーンが隠れて犯人が毒を盛るところなどを見ていながら、その後何らの措置も講じなかった点について
 ここから先の展開が私にはさっぱり理解できませんでした。 いくら何でも、何もしないで放っておくのは大問題だと思います。 たとえ犯人が子供だとしても。何か他に打つ手があったはずです。
 ここから先は物語の展開から言って私には余計だと思いました。この時点で捕まえて推理して終わった方が絶対よかったと思います。

5 レーンが最後の最後になってからようやくサム警部に真相を語ったことについて
 私はレーン自体そんなに嫌いではありませんが、今回の彼の態度はあんまりです。 彼一人で捜査している訳ではないのにあの段階になって真相を今更のように語るのは、レーンにいろいろ便宜をはかってくれたサム警部にあまりに失礼ではないでしょうか。
 レーンはサム警部が上から処分されることにでもなったら、その時は真相を明らかにするつもりだったと言っていますが、処分されなくてもサム警部に対する信用はガタ落ちになると私は思いますが…。そんな簡単に「処分されなかったから真相を隠しておいた」なんてよく言えたものだと思いました。

6 犯人が最初の毒殺未遂で自ら毒をあおったことについて
 これもいくら小説の筋書きどおりに事を運ぼうとしたとしても、13歳にもなれば毒を飲めば死ぬこと位理解できると思うのですが…。 大人になってから読んだので、私にはちょっと13歳の心情は理解できませんが、これも違和感がありました。

他にも動機が「血」のせいになっているのが何か納得しがたいものがありました。