出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
906 |
マイク・ウエスターウェイは、ひとつ大きなあくびをすると、両腕を頭のうえにのばした。リック・ホルマンはよく承知していたはずだったが、うかつにもそのとき、かたわらのネグリジェ姿の女に眼をそらしていた。……いきなり、マイクの両腕は方向を変えた。右手のはしがリックの首の左側にすごい力で空手チョップをくわせ、つぎの瞬間、おなじ右手の5本の指先がひとつになってやわらかなみぞおちへ突き刺さるようにめりこんだ。リックは、ひとたまりもなく床にのびてしまった。しかも、ようやく気がついてみると、マイクの姿は消えていて、代りに目玉を射抜かれたネグリジェ姿の女が横たわっていたのだ!
リックがこのモーテルに足を運んだのは、ハリウッドのグラマー女優ファブリエル・フライに、マイクと話をつけてくれと頼まれたからだ。4年前、彼女はつい気まぐれにマイクと結婚したのだったが、マイクはたった48時間の愛の営みを置きみやげに、ファブリエルの3万ドルの宝石とともにドロンをきめこんでいた。が、4年後のいまになって、ふたたび姿をあらわし、莫大な金と交換に離婚を認めると脅迫してきたのだ。新しい恋人ができているファブリエルは、まったく困りはて、リックに助けを求めたのだったが…… |