出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
1224 |
メイスンの鋭い眼は、依頼人の美女の妙にちぐはぐな服装の上に注がれた。その女シルヴィアは、故郷の町を捨てて都会へ出てきて、最近急に音信が途絶えた姉のメイを捜してもらいたいといってきたのだが、いかにも今、田舎から出てきたような安っぽい、派手なコートを着て、やぼったい髪型をしているのに、靴やスカートは都会風の洗練された容姿にふさわしいスマートさをもっていた。しかも秘書のデラが盗み見たところ、ハンドバッグの中には金と質札で一杯だった……。
メイスンの直感は的中した。シルヴィアと称する女は、失踪したメイ・ファー本人だったのっだ。彼女は、雇い主のペン・ウエントワースの小切手を偽造した疑いで追われていた。窮境を逃れるために妹の名を語ってメイスンの援助を受けようとしたのである。ウエントワースはメイの裏切りを許さないと息巻いていたが、メイスンは事件の裏に何か仕組まれた罠があることを確信した。
その翌日の深夜、ウエントワースが彼のヨットの上で射ち殺された。現場にはメイと、彼女の身を案じて探しに出かけてきた幼友達の荒くれ男、ハロルド・アンダーズがいた。容疑は当然二人にかけられたが……。
『囲いの中の女』とともに、ガードナーの死後発見された遺作。八十冊を越える一大シリーズの掉尾を飾るメイスン最後の事件! |