出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
405 |
部屋には、ドアを通してくる光以外に明りはなかった。外は暗かった。ベッドフォードは起きあがった。上着の左袖に、『全て片づきました。愛をこめて。ジェリイ』と書いた紙片が留めてある。彼は思い出した。前にそのドアを通ったとき、彼女が全裸に等しい姿で立っていたことを。彼に見つめられても、ローブを取ろうともしなければ、後ろを向こうともしなかったジェリイ……。
彼は部屋に入った。最初に目についたのは、床の上に横むきに倒れている男の姿だった。絨毯にしみ拡った赤い液体─その表面が、スタンドの灯を受け艶やかに光っていた。 |