出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
376 |
霧の深い夜だった。百万長者パーカー・ベントンのスマートな豪華ヨットは滑るように湾を走っていた。ディーゼル・エンジンの鼓動と二つのスクリュウの水を掻く音が、水面を圧して響いた…… 船上には、石油埋蔵の可能性を持つある島の借地権をめぐって係争中の七人の男女が、互いに錯綜する利害関係を社交的な表情に隠して乗り組んでいた。島を買い取ろうとしているベントンをはじめ、島の所有者ジェーンとその親戚、石油採掘権を持つシェルビイ……それぞれの思惑が正面からぶつかり、話し合いは不調のまま終わった。 その夜遅く、突き刺すような女の悲鳴が闇を貫いた。そして拳銃の発射音に続いて、鈍い水音が……。相談役として乗り合わせていたぺリイ・メイスンは素早くデッキに飛び出した。そこには、拳銃を手に呆然と立ちつくすシェルビイの妻マリオンの姿があった。だが、船内をくまなく探してもシェルビイはどこにもいない。海へ転落したのか? 深夜のデッキで何が起きたのか? |