出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
113 |
ダンテの大理石像で殴り殺されたニューヨークの古書商エイヴ・セリグの死体が発見されても、心から同情を寄せる人間はそう多くなかった。とかく商売にいかがわしい噂のあったセリグ、それだけに手を下しても不思議はない容疑者の数も少なくない─顧客を横取りされた古書商仲間のドック・ドーラン、盗品に巧妙な細工を加えてセリグに流していた弁護士バナーマンとその手先フィーラー……だが、中でも警察が目をつけたのは、セリグの店の元事務員ネッド・モーガンだった。 モーガンは二年前、店から稀覯本を盗んだ罪で刑務所に送られ、ごく最近街に戻ってきていた。セリグへの憎悪をむき出しにしたモーガンに向けられる世間の目は冷たかった。だが、ジョエル・グラスは二年前の事件に疑いを抱いていた。セリグの娘レアと恋に落ちたモーガンが金欲しさに店の品に手を出したのは明らかだ。しかし、一冊数万ドルもする『ドンキホーテ』の初版本を盗むはずはない。長年、盗まれた稀覯本を見つけ出して保険会社から手数料を稼いできたグラスの目はごまかせない。真相は、セリグがモーガンに罪を押しつけ、保険金を詐取したに違いないのだ。ということは、失くなった稀覯本はどこかに眠っているはずだ。グラスは本の行方を追いつつ、殺人事件の渦中へと踏み込んでいった……。 「第一ページから最後の驚くべき結末に至るまで、その変った背景は探偵小説界の一事件である」と評された名作ミステリ。しゃれた会話とスピーディな展開は、アメリカ探偵小説黄金期の香りを十二分に堪能させよう。 |