出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
938 |
ぺネロップ・ライトフェザー嬢ほどすばらしい娘は、またといるものではなかった。しかも、その愚かしさでも天下一品。東の国の見習いスパイとしてイギリスで見習い中のハリーコンプトンことピオトル・ミルーキンは、レストランでぺネロップに会ったとき、ぞっこんイカれてしまった。輝く褐色の髪、緑色の大きな眼が魅力いっぱいの顔にきらめいて、しびれるような美しさ。ハリーがそっと近づいていくと、このすばらしい女は、笑顔をみせた。あまつさえ、バカのような震え声で笑ったのである! 一瞬、先輩のスパイたちのことも、目下の急務《なだれ》作戦のこともハリーの脳裏を去り、ただ目の前の可愛い娘の存在しかなかった。厳しいスパイ稼業とはいえ、東の国からやって来て異国に住むハリーにとって、やはり女は恋しいものだった。それに、美しいぺネロップは、あけっぴろげで、用心深くはなく、仲良くなっても大丈夫だ、とハリーは思った。……やがて、急転直下、ハリーとぺネロップは熱々の仲になっていった。が、ふとしたことで、ぺネロップがイギリス諜報機関の大物の家の裁縫娘をしていることをハリーが知ったことから物語は意外な方向へと進展していったのだ……フランス流のエスプリとユーモアをふんだんに盛り込んて軽妙洒脱に描きあげたユーモア・スパイ・ミステリ! |