【感想】★★
ホームズ時代より前に書かれたということもあって、本作品はトリックなどの謎解きを中心とした本格推理が楽しめることはもちろんありませんでしたが、話が二転三転して最後にも大きなどんでん返しがまっていて、ミステリーとしては十二分に楽しめる作品だと思います。
物語構成は非常に上手くて、これが1886年に書かれた作品だということを考えると当時一大ベストセラーになったというのも頷けますし、後世の作品にも影響をもたらしたと思います。そういう意味では非常に歴史的価値もある作品といえるでしょう。
ただこういった歴史的な価値を抜きに客観的に作品自体を判断するとすればやはり良くない点、違和感も多いのは否定できないと思います。
まず物語の途中である人間が別のある人間の秘密について頑として語らないという部分があるのですが、これが自分の生命を犠牲にしてまでとなると少し首を傾げてしまいました。秘密を守って警察に話すことはできなくはないと思いますし、いくらでも対処の方法はあると思えますが。
また展開は二転三転はするのですが、この合間が妙に長いというか、物語にあまり関係のない余計な情景描写などが多くて、早く先に行って欲しいと何度も思わされました。こういった所がこの作品の評論を見るとよく書かれている冗漫だとか言われる部分なのでしょう。これは私も概ね同感でした。
話は面白いですし、ラストも一捻りあってよく出来た作品だけに、もっと物語が簡潔にスピーディーに描かれていたらもっと良い印象であったと思われるのが残念です。
もう一つこの物語は南半球のオーストラリアが舞台だけに、いろいろと南半球独特の文化が描かれていて、イギリスやアメリカの小説を読みなれている私にとってはかなり新鮮でした。最初はなぜ7月なのにコートを羽織っているのかと首を傾げたものでしたが(笑)
この作品も現在は非常な入手困難本ですが、これは歴史的な価値などを考慮に入れればそこそこの値段はついても…とは思いますが、数千円も出してまで買うような内容ではないとは思います。
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