出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
1217 |
「私は妻を殺そうとしたことを認めます」─マッサージ師ラウール・デュバルが金持の妻ベロニックとの生活に疲れ、そのけりをつけようと試した賭けの結果がこれだった……
ラウールが、彼を冷たく見下す妻を憎み、二人が乗った車のタイヤのボルトをゆるめたのは衝動によってだった。間一髪で事故を避けた後、ベロニックが彼の意図を見破り、今後の安全のため告白書を書くよう迫った時、ラウールはむしろ、離婚が決定的な事実となり、その後の貧しいながら自由な生活に希望さえ見出して、簡単に署名してしまった。
しかし運命は皮肉だった。離婚の手続きをすすめていたラウールは、ある日公証人に呼ばれ、幼い彼と彼の母を捨てて国へ帰ってしまったアメリカ人の父が莫大な遺産を彼に残して死んだと告げられた。夢見ていた豊かな生活が現実となるのだ! だが、ベロニックがそれを知れば、あの告白書をたてに慰藉料として遺産をむしり取るだろう。離婚は避けなければならない。そんな時、ベロニックが自動車事故で重傷を負ったという知らせが入った。妻の心を取り戻すことを決意し、病院に駆けつけた彼は眼を疑った。妻の所持品を身につけ、ベッドに横たわっていたのは、見たこともない女だった……! 巧妙に仕組まれた罠に追いつめられていく男の運命を描くボアロー、ナルスジャックの最新傑作! |