フランスを代表する本格作家

BEL S・A・ステーマン
(Stanislas André Steeman)

六死人
「六死人」
(1931年)
(東京創元社)

 ベルギー出身の本格ミステリー作家。彼の母国ベルギーでは、メグレ警視もので世界的に知られている作家ジョルジュ・シムノンとともにミステリの巨匠として高い評価を得ているそうです。

 そして1930年代のほんの僅かな期間フランスでも流行を見せた本格推理小説の黄金時代に意欲的に作品を発表し、ピエール・ヴェリーらとともにフランス本格推理小説黄金時代の中心的存在として活躍しました。

 早熟だったらしく、何と14歳の時に年齢を隠してパリの週刊誌に短編小説の寄稿を始めていたそうです。
  そして20あまりの学校を転々とした後、1924年に16歳でベルギーの首都ブリュッセルの〈ラ・ナシオン・ベルジュ〉紙のルポライターとなり、この頃からミステリー小説を書き始めたといいます。

 やがて1928年になると、同僚記者であったサンテール (Sintair) と合作でミステリーを5冊ほど書き上げ、これがフランスのマスク叢書から出版されます。

三人の中の一人
「三人の中の一人」
(1932年)
(番町書房)

 その翌年の1929年には独立を果たしますが、英米ミステリの影響を深く受けてトリックやプロットに工夫を凝らした本格ミステリは、それまで冒険活劇や伝奇的な筋立てがほとんどであったフランス・ミステリ界に新風を巻き起こし、1931年に発表した長編「六死人」でフランス冒険小説大賞を受賞。その後も様々な趣向を凝らし、画期的なトリックを用いた本格推理小説を次々に発表し続けて人気を集めました。

 また1939年には読者への挑戦状を挿入した長編「殺人者は21番地に住む」を発表し、ファンの注目を集めます。そしてこの作品はアンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督・脚本によって後に映画化もされ、古典的名作となっています。


■作家ファイル■

出身地
ベルギー、リエージュ
生没
1908年1月23日~1970年12月15日(62歳)
作家としての経歴
1928
〈ラ・ナシオン・ベルジュ〉紙の同僚記者であったサンテール (Sintair) と合作で「Le mystère du zoo d'anvers」を初めとするミステリー長編を5冊ほど書き上げ、これがフランスのマスク叢書から出版される
1931
長編「六死人」を発表し、フランス冒険小説大賞を受賞
1939
読者への挑戦状を挿入した長編「殺人者は21番地に住む」を発表(のちアンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督によって映画化)
シリーズ探偵
ウェンセラス・ヴォロベイチク警部(通称ウェンズ氏)
(L'inspecteur Wenceslas Vorobeitchik (L'Inspecteur Wens))
エイメ・マレイズ警部
デジレ・マルコ
代表作
【ウェンズ氏】
「六死人」「マネキン人形殺害事件」
【ノンシリーズ】
「殺人者は21番地に住む」

■著作リスト■

1 ウェンセラス・ヴォロベイチク警部(ウェンズ氏)登場作品リスト

2 エイメ・マレイズ警部登場作品リスト

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Le doigt volé
(盗まれた指)
1930 -
2 ゼロ 1932 現代教養文庫3038 ミステリ・ボックス「ウェンズ氏の切り札」
別冊宝石79('58)
EQ'92.9(89)
新青年'35.12
3 マネキン人形殺害事件
(模型人形殺害事件)
角川文庫('76)
新青年'35夏期増刊
ウェンズ氏との共演
4 ウェンズ氏の切り札 現代教養文庫 ミステリ・ボックス3038

3 デジレ・マルコ登場作品リスト

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Madame la mort 1951 -
2 Dix-huit fan tôme
(十八人の幽霊)
1952 -
3 Faisons les fous 1961 -

4 その他の主な作品

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Péril 1930 -
2 Le Démon de Sainte Croix 1932 -
3 Le yo-yo verre
(Vuarge dangereux)
1933 -
4 Le lévrier bleu 1934 -
5 L'adorable spectre
(Feu Lady Anne)
1935 -
6 Le fils de Balaoo 1937 -
7 La maison des veilles 1938 -
8 L'Infaillible Silas Lord -
9 殺人者は21番地に住む 1939 創元推理文庫212-1 映画化
10 Légitime défense
(Quai des Orfèvres)
1942 -
11 Haute tension 1953 -
12 Poker d'enfer 1955 -
13 Six hommes à tuer
(Que personne ne sorte)
1956 -
14 Impasse des boîteux 1959 -
15 Le condamné meurt à cinq heures -
16 Une veuve dort seule 1960 -
17 Peut-être un Vendredi 1964 -
18 Autopsie d'un viol -
19 La résurrection d'Atlas 1968 -

【サンテールとの合作】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Le mystère du zoo d'anvers 1928 -
2 Le treizième coup de minuit -
3 Le maître de trois vies 1929 -
4 Le diable au collège 1930 -
5 Le guet-apens 1932 -

【邦訳短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 カナリヤの死 新青年'34.7
2 三悪人
3 姿なき敵
4 恐怖 新青年'34.11
5 作家の最期 荒地出版社「一分間ミステリ」('59)
新青年'34.7
6 Les yeux éteints
見えない眼
早川文庫「街中の男」('85)
HMM'81.2
7 Le Mort Burlesque ou crime à distance
風変りな死体─ある遠隔殺人の話
HMM'04.11

【参考】「EQ1992年9月号(第89号)」(光文社)
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