アンクル・アブナーの叡知 タイトル アンクル・アブナーの叡知
原題 Uncle Abner ─Master of Mysteries─
発表年 1918
著者/訳者/解説 メルヴィル・D・ポースト/吉田誠一他/吉田誠一
カバーデザイン 浅賀行雄
ページ数 376
作品レビューあらすじ(解説文)
出版 早川書房
ハヤカワミステリ文庫
33-1
法廷は大変な混雑だった。富裕な地主が射殺され、彼に養われていた少女とその恋人の青年に嫌疑がかかり、二人は今まさに断罪されようとしているのだった! その時アブナー伯父は突然席を立ち判事に向い異議を唱えた。そして彼が雄弁を振った大胆な推理と論証とは?
19世紀初期の巡回裁判法廷の情景と民主主義確立途上のアメリカ人気質を生々と描く上記「ナボテの葡萄園」をはじめ、牧場主である徳望家アブナーが開拓期のヴァージニアを舞台に、そのソロモンの如き叡知を縦横に駆使し活躍を繰り広げる掌篇十八篇を収録!
初版 1976年(390円)
重版  
入手 amazon
ISBN 4-15-071801-6

序 エドマンド・クリスピン

1 ドゥームドーフ殺人事件 (The Doomdorf Mystery)

2 手の跡 (The Wrong Hand)

3 神の使者 (The Angel of the Lord)

4 神のみわざ (The Act of God)

5 宝さがし (The Treasure Hunter)

6 死者の家 (The House of the Dead Man)

7 黄昏の怪事件 (The Twilight Adventure)

8 奇跡の時代 (The Age of Miracle)

9 第十戒 (The Tenth Commandment)

10 黄金の十字架 (The Devil's Tools)

11 魔女と使い魔 (The Hidden Law)

12 金貨 (The Riddle)

13 藁人形 (The Straw Man)

14 神の摂理 (The Mystery of Chance)

15 禿鷹の目 (The Concealed Path)

16 血の犠牲 (The Edge of the Shadow)

17 養女 (The Adopted Daughter)

18 ナボテの葡萄園 (Naboth's Vineyard)


【感想】★★★★

 神の正義を頑ななまでに信じているアブナー伯父の人間的魅力がたっぷり味わえる一冊です。数多くいるホームズのライヴァルたちの中でもとりわけどっしりとした存在感と威厳を持ち、探偵としてこれほど頼りになるキャラクターは他にいないでしょう。 一方推理小説としてもなかなか興味深いトリックは結末の作品もあり感心させられました。

 特によかった作品は、まず、冒頭の密室ものの傑作「ドゥームドーフ殺人事件」。これは何度も欧米の傑作集に採られているのも肯ける技巧派トリックの作品です。その次の「手の跡」と「神のみわざ」の結末にも非常に感心させられました。
 それから「神の摂理」は、”この世を支配するものは善ではなくて知である”と言い、”全ては必然ではなく偶然にすぎない”と言い切る男の言葉に対し、敢然と神の正義と導きを主張するアブナーがとても格好良く、探偵としての魅力が充分発揮されている好編です。

 そしてトリを飾るのがこれまた代表作の「ナボテの葡萄園」。これは正義を信じるアブナーの真骨頂のような作品で、立場や宗教の違いを超えて、正義を信じる人々の熱い思いが心にしみわたる作品です。推理小説としても短編としては珍しくきちんと伏線も張ってあり、結末も意外性に富み、この短編集の間違いなく最高傑作といえます。

 1918年というかなり昔に書かれた作品であるにもかかわらず、登場人物たちが生き生きと描かれているせいか古臭さはまったく感じさせませんでしたし、クイーンの定員にも選ばれている通り、まさしく古典的傑作というにふさわしい内容の短編集であると思いました。


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