モジュラー型小説の先駆者

UK J・J・マリック
(J. J. Marric)
〔別名 ジョン・クリーシー (John Creasey)〕

トフ氏と黒衣の女
「トフ氏と黒衣の女」
(1940年)
(論創社)

 本名をジョン・クリーシーというイギリスの推理小説家で、イギリス推理作家協会(CWA)の創設者の一人として、そして〈ギデオン警視〉シリーズの作者としても有名な人物です。

 ギデオン警視シリーズは、エド・マクベインの〈87分署〉シリーズなどに代表される今日の警察小説で多く用いられている、複数の事件が同時に発生するいわゆる「モジュラー型」の小説の先駆けとして歴史に名を残したシリーズです。

 事務職を転々とした後1935年から専業作家となりますが、大変な多作家として有名であり、24のペンネームを用いて40年間で500以上の長編を残しているそうです。
そしてあまりの作品数の多さにその生前に全てが出版しきれず、その死後何年もかかってようやく全てが発表されたといいます。そんな 彼の作品は世界中で翻訳されていて総計6000万部以上売れたといいます。

 その中で代表作とされる作品はやはりギデオン警視シリーズが中心で、 1956年、「ギデオン警視の一週間」でイギリス推理作家協会(CWA)賞シルヴァー・ダガー賞を、1962年、「ギデオンと放火魔」でアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長編賞を受賞しています。

ギデオンと放火魔
「ギデオンと放火魔」
(1961年)
(早川書房)

 またその活躍は作家活動だけに止まらず、1953年に設立されたイギリス推理作家協会(CWA)の中心人物として設立に腐心し、その初代会長も勤めています。
 そしてそのCWAの最優秀処女長編賞は、彼のこれらの功績を讃え彼の本名を冠して「ジョン・クリーシー記念賞」と名付けられています。

 更にクリーシーは1966から67年にかけてはアメリカ探偵作家クラブ(MWA)の会長にも就任しています。


■作家ファイル■

本名
ジョン・クリーシー(John Creasey)
J・J・マリックの由来はJ・Jは彼の本名のジョンと奥さんのジーンから、マリックは二人の息子のマーチン(Martin)とリチャード(Richard)からとったもの
出身地
イギリス、サリー州サウスフィールズ
学歴
ロンドン・フルハム・エレメンタリー・スクール、スローン・スクール卒
生没
1908年9月17日~1973年6月9日
作家としての経歴
1932
アンドリュー・メローズ名義で処女長編を発表
1935
本格的に作家に専念する
1953
英国推理作家協会(CWA)設立、初代会長に就任する。
1955
ギデオン警視シリーズ第一作「ギデオンの一日」を発表(この翌年E・マクベインの87分署シリーズ「警官嫌い」が発表されている)
1956
「ギデオン警視の一週間」でイギリス推理作家協会(CWA)賞シルヴァー・ダガー賞を受賞
1962
「ギデオンと放火魔」でアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長編賞を受賞
1966
アメリカ推理作家協会(MWA)の会長に就任(67年まで)
1969
アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞巨匠賞を受賞
シリーズ探偵
ジョージ・ギデオン警視 (George Gideon)
ロジャー・ウエスト主任警部 (Inspector West)
Z課 (Department Z)
マーティン&リチャード・フェイン (Fane Brothers)
リチャード・ローリソン閣下(ザ・トフ) (Toff)
セクストン・ブレイク (Sexton Blake)
パルプレー博士 (Dr. Palfrey)
ザ・リベレーター (Liberator)
フォリー警視 (Superintendent Folly)
エマニュエル・セリーニ博士 (Dr Emmanuel Cellini)
パトリック・ドーリッシュ (Patrick Dawlish)
ブルース・マードック (Bruce Murdoch)
マーク・キルビー (Mark Kilby)
ジョン・マナリング男爵(ザ・バロン=ブルー・マスク)(Baron)
代表作
「ギデオンの一日」「ギデオン警視の一週間」
「ギデオンと放火魔」

■著作リスト■

1 ジョージ・ギデオン警視登場作品リスト

2 トフ氏登場作品リスト

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Introducing the Toff 1938 -
2 The Toff Goes on 1939 -
3 The Toff Steps Out -
4 トフ氏と黒衣の女 1940 論創社 論創海外ミステリ1('04)
5 The Toff Breaks in -
6 トフ氏に敬礼 1941 論創社 論創海外ミステリ38('06)
7 The Toff Proceeds -
8 The Toff Goes to Market 1942 -
9 The Toff Is Back -
10 The Toff Among the Millions 1943 -
11 Accuse the Toff -
12 The Toff and the Curate
(The Toff and the Deadly Parson)
1944 -
13 The Toff and the Great Illusion -
14 Feathers for the Toff 1945 -
15 The Toff and the Lady 1946 -
16 The Toff on Ice
(米 Poison for the Toff)
-
17 Hammer the Toff 1947 -
18 The Toff in Town 1948 -
19 The Toff Takes Shares -
20 The Toff and Old Harry 1949 -
21 The Toff on Board -
22 Fool the Toff 1950 -
23 Kill the Toff -
24 A Kinfe for the Toff 1951 -
25 The Toff Goes Gay
(米 A Mask for the Toff)
-
26 Hunt the Toff 1952 -
27 Call the Toff 1953 -
28 The Toff Down Under
(Break the Toff)
-
29 The Toff at Butlin's 1954 -
30 The Toff at the Fair
(Last Laugh for the Toff)
-
31 A Six of the Toff
(A Score For the Toff)
1955 -
32 The Toff and the Deep Blue Sea -
33 Make-Up for the Toff
(Kiss the Toff)
1956 -
34 The Toff in New York -
35 Model for the Toff 1957 -
36 The Toff on Fire -
37 The Toff and the Stolen Tresses 1958 -
38 The Toff on the Farm
(米 Terror for the Toff)
-
39 Double for the Toff 1959 -
40 The Toff and the Runaway Bride -
41 A Rocket for the Toff 1960 -
42 The Toff and the Kidnapped Child
(米 The Kidnapped Child)
-
43 Follow the Toff 1961 -
44 The Toff and the Teds
(米 The Toff and the Toughs)
-
45 A Doll for the Toff 1963 -
46 Leave It to the Toff -
47 The Toff and the Spider 1965 -
48 The Toff in Wax 1966 -
49 A Bundle for the Toff 1967 -
50 Stars for the Toff 1968 -
51 The Toff and the Golden Boy 1969 -
52 The Toff and the Fallen Angels 1970 -
53 Vote for the Toff 1971 -
54 The Toff and the Trip-Trip-Triplets 1972 -
55 The Toff and the Terrified Taxman 1973 -
56 The Toff and the Sleepy Cowboy 1974 -
57 The Toff and the Crooked Copper 1977 -
58 The Toff and the Dead Man's Finger 1978 -

【中短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Toff on the Trail 1942 - 表題中編のみ
2 Murder Out of the Past, and Under-Corner Man 1953 -
1 Murder Out of the Past -
2 Under-Corner Man -

【戯曲】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Toff 1963 -

3 その他の邦訳作品

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 暗やみ男爵
(暗闇男爵)
1934 HMM'80.5(抄訳)
新青年'37特別増刊(抄訳)
アントニー・モートン名義
怪盗バロンもの

【短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Screaming Woman
悲鳴をあげる女
HMM'73.11 ジョン・クリーシー名義
ロジャー・ウェスト主任警部
2 The Greyling Crescent Tragedy
二十九番地の悲劇
HMM'76.11

【参考】「ギデオンの一日」(早川書房 ハヤカワミステリ文庫)
access-rank


TOPへ