【感想】★★★★
犯人ではなく被害者が誰かを当てさせるという一風変わった趣向のマガーの初長編ですが、やはり普段から当然のように「犯人」あてをしている読者には「被害者」を当てるというだけでかなり新鮮に映ると思います。
ただいくら趣向が面白いといっても本格ミステリである以上は中身もそれなにり伴っていなければ評価されない訳ですが、この作品は内容的に見ても本格ミステリとして充分合格点をつけられるものでした。
伏線が巧妙に張り巡らされたトリッキーなミステリというよりは、登場人物の行動・仕草・心理・性格などが非常に良く描かれていて、作中いろいろと起こる揉め事・争い事などを通して登場人物の心理面から誰が犯人であるボスのステットソンに殺される可能性があるかを当てていくという感じで読み進めていけばいいと思います。
もちろん決定的な物的証拠というものもラストに用意されているのですが、少し現代のしかも我々日本人には分かりにくいものですので、当てるのは難しいと思います。
地位や財産・名声などに執着する人間の醜さや女性同士の軋轢・会社内部での出世争いなどのドロドロとした人間関係というものが鮮明に描き出されているので、普通なら気分が重くなったりため息が出てきそうなお話なのですが、そういう題材を扱っている割には会話・語り口にテンポがあり、風刺も効いていて、軽く笑い飛ばして読めますので、読後感も悪くない作品だと思います。
ただ中盤のブリッジのところが私はブリッジを知らないだけにかなり長く感じました。ここでせっかく盛り上ってきた雰囲気や緊張感が一度切れてしまったのが残念でした。ブリッジをよくご存知の方なら問題はないと思いますが、それ以外の方は私と同様に感じるかもしれません。
また登場人物も結構多いので、最初はなかなか全ての人物を整理して読むのは大変だと思いますが、著者の人物描写が上手いので読み進めていくうちにすぐに人間関係も含めて理解できると思います。
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