美食の安楽椅子探偵

USA 私立探偵 ネロ・ウルフ
(Nero Wolfe)

私立探偵 ネロ・ウルフ

腰抜け連盟
「腰抜け連盟」
(1935年)
(早川書房)

 アメリカの人気作家レックス・スタウトが生みだした、美食と蘭をこよなく愛する私立探偵。ユーゴスラビアのモンテネグロ出身。

 ニューヨーク・マンハッタン西35丁目の古い褐色砂岩の家に助手のアーチー・グッドウィン、料理人のフリッツ・ブレンナー、園芸係のシオドア・ホルストマンらと住んでいる体重285ポンドもある巨漢の人物で、とにかく外出を嫌い、料理にはうるさく、プライドが高い横柄な人物です。
 外出嫌いのため捜査のためであっても一歩も外に出ず、実際の捜査・証拠収集にあたるのは助手のアーチーをはじめとする調査員たちであり、ウルフは彼らが集めた情報を元に鮮やかに推理し事件を解決に導きます。いわゆる典型的な〈安楽椅子探偵〉といえるでしょう。

 また大変な美食家で、お抱えの料理人を雇い、美味しい物のためなら嫌いな外出も厭わないほどです。また蘭の栽培にも熱心で、屋上に温室を設け、約1万株あるという蘭に囲まれながら毎日4時間そこで過ごします。

 この食事と蘭の栽培は毎日の日課として時間がきっちりと決められていて、その間はたとえどんなことがあっても事件を受け付けることはありません。

 このような美食と蘭の栽培には大変お金がかかり、その総額は月1万ドル以上といいます。そのためいつも法外な額の依頼料を要求しますが、必ず事件を解決してくれるので依頼をしにくる人間は後を絶ちません。 もっともこういった家の維持費が充分ある時は依頼を断ることもあります。

 実際に捜査にあたらない分、その推理力と知識は半端ではなく、いつも読書を欠かさず、また8カ国後を話すことができます。
 その一方で一般常識はあまりなく、アーチーに「無知と博識のかたまり」とあきれられています。また蠅や女性が苦手という可愛らしい一面も持っています。

 助手のアーチーは本編の語り手であり、ウルフとは対照的な痩せ身でハンサムな青年で、ミルクが大好き。助手ですがウルフに臆することなくいつも彼とやりあっています。このウルフとアーチーのやりとりが実に絶妙で、物語をいっそう楽しいものにしてくれます。
 この他にも個性的な部下が何人かいて、ウルフを助けます。

 一方でウルフのライヴァルとして登場するのがニューヨーク市警警部のクレイマーで、数多くの作品に登場してウルフと対決します。

料理長が多すぎる
「料理長が多すぎる」
(1938年)
(早川書房)

■原作■

レックス・スタウト
(Rex Stout 米 1886-1975)


■人物ファイル■

住所
ニューヨーク西35丁目の三階建ての家
体格
身長5フィート11インチ(180センチ)、体重285.6ポンド(143キロ)
趣味
美食と蘭の栽培、読書
好きな物
ビール(一日1ダース=6.8リットル)
嫌いな物
外出(安楽椅子探偵といわれる所以)、雨、蝿
協力者
語り手で助手のアーチー・グッドウィン (Archie Goodwin)
料理人フリッツ・ブレンナー
園芸係シオドア・ホルストマン
ウルフの部下のソール・パンザー、フレッド・ダーキン、オリー・キャザー、ジョニー・キームズ
アーチーの恋人リリー・ローワン
ライヴァル
ニューヨーク市警本部のクレイマー警部とその部下たち
事件簿
33長編41中編に登場
14中編集

■事件ファイル■

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
毒蛇 1934 早川文庫35-3
HPB356
東京創元社 世界推理小説全集77('58)
ウルフ初登場
EQアンケート75位
腰ぬけ連盟 1935 早川文庫35-2
HPB562
ハヤカワベスト100・85位
ラバー・バンド 1936 早川文庫35-6
HPB624
赤い箱 1937 早川文庫35-4
HPB483
料理長が多すぎる
(15人の名料理長)
1938 早川文庫35-1
別冊宝石58('56)
シーザーの埋葬 1939 光文社文庫(新装版)('04)
光文社文庫('87)
EQ'87.1(55)
我が屍を乗り越えよ 1940 HPB439
遺志あるところ EQ'93.7-9(94-95)
語らぬ講演者 1946 別冊宝石58('56)
10 女が多すぎる 1947 EQ'89.11-'90.3(72-74)
11 Xと呼ばれる男 1949 HPB近刊予定
EQ'98.9-'99.5(125-129)
12 The Second Confession HPB近刊予定
13 In the Best Families
(Even in the Best Families)
1950 HPB近刊予定
14 編集者を殺せ 1951 HPB1767
15 Prisoner's Base
(Out Goes She)
1952 -
16 黄金の蜘蛛 1953 HPB177
17 ザ・ブラック・マウンテン 1954 HPB近刊予定
しゅえっと('98)
18 Before Midnight 1955 -
19 殺人犯はわが子なり 1956 HPB1741
HMM'81.5-6
20 If Death Ever Slept 1957 -
21 Champagne for One 1958 -
22 Plot it Yourself
(Murder in Style)
1959 -
23 Too Many Clients 1960 -
24 究極の推論 1961 EQ'97.7(118)
25 ギャンビット 1962 EQ'92.5-7(87-88)
26 The Mother Hunt 1963 -
27 A Right to Die 1964 -
28 ネロ・ウルフ対FBI 1965 光文社文庫(新装版)('04)
光文社文庫('86)
EQ'84.1-3(37-38)
29 Death of a Doxy 1966 -
30 ファーザー・ハント 1968 EQ'82.1-5(25-27) CWA賞外国作品賞('69)
31 Death of a Dude 1969 -
32 マクベス夫人症の男 1973 早川文庫35-5
33 ネロ・ウルフ最後の事件 1975 早川文庫35-7 スタウト最後の作品

【中編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
Black Orchids 1942 -
1 黒い蘭 1942 EQ'86.3(50)
宝石'56.9(11-12)
2 死の招待
(破傷風殺人事件)
(割れた化粧ビン)
別冊宝石58('56)
EQ'86.7(52)
東都書房 世界推理小説体系21('64)
高校進学'62.7付録 高進文庫(抄訳)
Not Quite Dead Enough 1944 -
1 まだ死にきってはいない 1942 EQ'88.1(61)
宝石'56.2(抄訳)
2 ブービー・トラップ
(偽装爆弾)
1944 EQ'86.9(53)
探偵倶楽部'56夏の臨時増刊
Trouble in Triplicate 1949 -
1 死の前に 1947 探偵倶楽部'57.3
2 求む、影武者 1945 別冊宝石87('59)
3 証拠のかわりに
(殺さなかった証拠になる)
1946 創元文庫100-5「世界短編傑作集5」('61)
東京創元社 世界推理小説全集71「世界短篇傑作集3」('59)
探偵倶楽部'58.1
Three Doors to Death 1950 -
1 二度死んだ男 1947 EQ'93.5(93)
2 花のない葬札 1948 EQ'88.7(64)
3 死の扉 1949 EQ'89.5(69)
Curtains for Three 1951 -
1 翼ある拳銃 1949 EQ'85.7(46)
2 セントラル・パーク殺人事件 1948 HMM'79.11
3 The Affair of the Twisted Scarf
ねじれたスカーフ
1950 EQMM'62.1
Triple Jeopardy 1952 -
1 身から出た錆 1951 別冊宝石123('63)
2 巡査殺し EQMM'57.12
3 ヒーローは死んだ EQ'96.7(112)
Three Men Out 1954 -
1 Invitation to Murder
美しい容疑者たち
(死の遺産)
1952 HMM'86.2
ヒッチコックマガジン'63.7
2 The Zero Clue
ゼロの手がかり
EQMM'63.10
3 ワールド・シリーズの殺人 HPB729「EQMMアンソロジー II 」('62)
Three Witness 1956 -
1 法廷のウルフ 1955 EQ'80.5(15)
2 人を殺さば 1954 EQ'95.1(103)
3 真昼の犬 新潮文庫「いぬはミステリー」('92)
EQMM'57.2
Three for the Chair 1957 -
1 死を招く窓 1955 カッパまがじん'77.5
2 殺人はもう御免 EQMM'58.7
3 探偵が多すぎる 1938 HMM'72.10
EQMM'59.10
セオドリンダ・ドル・ボナー嬢との共演
10 And Four to Go
(Crime and Again)
1958 -
1 クリスマス・パーティ 1957 新潮文庫「クリスマス12のミステリー」('85)
2 イースター・パレード 1956 EQ'87.5(57)
3 独立記念日の殺人 1957 HMM'76.2
4 殺人は笑いごとじゃない
(とんでもない殺人)
新潮文庫「ビッグ・アップル・ミステリー」('85)
講談社文庫「安楽椅子探偵傑作選」('79)
HMM'72.7
11 Three at Wolfe's Door 1960 -
1 毒薬ア・ラ・カルト
(ポイズン・ア・ラ・カルト)
1960 新潮文庫「16の殺人メニュー」('97)
創元文庫169-4「ディナーで殺人を/下」('98)
HMM'75.2
2 第三の殺人法 EQ'92.9(89)
3 The Rodeo Murder
ロデオ殺人事件
EQ'98.7
12 Homicide Trinity 1962 -
1 殺人鬼はどの子?
(ど・れ・が・殺・し・た?)
1961 早川文庫2-35「クイーンズ・コレクション1」('83)
EQMM'62.8
2 Death of a Demon
(The Gun Pazzle)
-
3 Countefeit for Murder
(The Counterfeits Knife)
-
13 Trio for Blunt Instruments 1964 -
1 殺しはツケで 1962 EQ'79.11(12)
2 スイート・コーン殺人事件 EQ'78.7(4)
3 Blood Will Tell
血の証拠
1963 EQMM'64.6
14 Death Times Three 1985 -
1 苦いパテ 1940 EQ'83.3(32)
2 Frame-Up for Murder 1958 -
3 Assault on a Brownstone 1961 -

【エッセイ】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
なぜネロ・ウルフは蘭が好きか 1963 パシフィカ 名探偵読本4「エラリイ・クイーンとそのライヴァルたち」('79)
EQ'78.7
アーチー・グッドウィン名義

【研究書】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
名探偵読本4 エラリイ・クイーンとそのライヴァルたち 1979 パシフィカ('79) 石川喬司+山口雅也編
日本で独自に編纂

【パロディ・パスティーシュ】

すべてロバート・ゴールズボロ著

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
ネロ・ウルフの殺人交響曲 1986 二見文庫('87)
Death on Deadline 1987 -
The Bloodied Ivy 1988 -
The Last Coincidence 1989 -
Fade to Black 1990 -
Silver Spire 1992 -
The Missing Chapter 1994 -

【参考】「エラリイ・クイーンとそのライヴァルたち」(パシフィカ 名探偵読本4)
「ラバー・バンド」(早川書房 ハヤカワミステリ文庫)
「赤い箱」(早川書房 ハヤカワミステリ文庫)
名探偵コナン17巻(小学館)